あの夏の記憶だけ、いつまでもおなじあかるさでそこにある『すいかの匂い』

すいかの匂い

  • 著者:江國 香織
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2000/6/28

あの頃は感じることが出来たモノ、コト。

小学校の時のこと、思い出せますか?

空調のきかない教室、すこしずつ顕著に現れるスクールカースト、教室にむせかえるシーブリーズの匂い、クラスで浮いているあの子の寂しそうな顔。

随分前の出来事なのに、忘れられないあの人の言葉————

バニラアイスの木べらの味、ビニールプールのへりの感触、おはじきのたてる音。

 毎日の忙しさに追われ、慌ただしい毎日の中に消えていってしまったものたち。あの頃は感じることが出来たモノ、コト。

この夏、「すいかの匂い」を読んで、思い出してみませんか。

少女たちの夏の思い出

本書は11部で編成されている短編集です。11人の少女の夏の記憶が繊細なタッチで描かれています。

あなたにも、断片的で忘れがたい記憶ありませんか。

本書の少女たちの夏の思い出は平凡で爽やかなものだけではありません。

一つの体を共有している双子が食べていた、蟻にまみれたすいか。

近所の男がくれた死んだクマゼミ。

そんなものたちすらも、本書は美しく描いています。

最終章:影

                         

最終章、「影」では語り手の少女とMという女の子のお話です。転校してきた少女をクラスメートMは友達になってもないのに世話を焼きます。困った時、いつも傍にいてくれたM。大人になった今でも、たまに連絡してきて、何年も連絡をとらない時もあります。少しうっとうしいと思っていても少女の人生にはいつもMがいました。

Mの爪は、とても短い爪でした。同性愛者であるという噂もありました。しかし少女はそんなこと気にしませんでした。Mとは友達でも、恋人でもありません。友情でも恋でもないこのふたりの間に介在するつながりは、不思議なものです。「友達」でも「恋人」でもないふたり。友情とか愛情とか、そんな簡単な言葉はこの小説では使われません。

 

本書を読めば、自分の豊かな感受性を少し思い出せるかもしれません。

冷たいそうめんを食べて、すこし一息ついたころ、「すいかの匂い」をいかがでしょうか。

すいかの匂い

  • 著者:江國 香織
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2000/6/28

モデルプロフィール

  • 名前:みづき
  • 生年月日:1998年
  • 出身地:北海道
  • 職業:学生(法政大学)
  • 趣味・一言:バレエ鑑賞
  • 最近の悩み:東京が暑すぎる

(カメラマン:村井 優一郎)

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WRITERこの記事を書いた人

yukako

大学生。出身は熊本県。熊本県民はくまモンをそれほど愛してないです。名前を漢字にすると、祐花子。お母さんが、お花が好きな優しい子になってほしかったみたい。将来は、カルチャーが持つ感動を世の中に伝えたい。趣味は読書(ただし小説とマンガ)。論理性も身につけるべきって思うけど、自分らしく感性で生きたいとか思っちゃう頑固。大学も、パンフレットのデザインで決めてしまった。エニアグラムタイプ4。