夏の冒険を待ちわびていたあの頃『八月の博物館』

八月の博物館

  • 著者:瀬名 秀明
  • 出版社:角川文庫
  • 発売日:2003/6/25

夏の冒険


じめじめとした梅雨が終わり、夏休みがやってくる。小学生の頃、終業式の日は急いで家に帰ったものだ。家に帰ったら何をしよう。冷蔵庫にすいか、まだあったかな。アイスクリームでもいいな。ああ、「夏休み」。なんて甘美な響きだろう。セミをとったり川に遊びに行ったり。母親に「夏休みの宿題やりなさい!」と言われてもやる気なんて一向に出なかった。夏休みの宿題は8月の30日ぐらいからやればいいのだ。地味に絵日記が面倒だった。サボるとその日の天気、その日に何があったか思い出せないものだった。少し話がずれてしまった。
さて、大人になってからの「夏」は、ただただ暑く疎ましい季節になってしまったものだ。夏休みも学生時代のように充分に無いし、ビル風もモヤっと熱く、気分もモヤモヤする。「夏の冒険」なんて、大人になってしまった今、非現実的な単語だ。

懐かしい夏の匂い


終業式の帰りに寄り道した洋館に足を踏み入れ、時空を移動出来る博物館に足を踏み入れるトオル。ヒットを一作飛ばしたはいいものの、なかなか次の良い小説が書けず悩む小説家。エジプトを愛する19世紀の考古学者。本書は、この3人の物語りが交錯し、思わぬところで線を結ぶエンターテイメントだ。懐かしい夏の匂いが感じられ、スケールの大きい壮大な作品だ。

「物語り」とは何か


考えたことはあるだろうか。「物語り」とは何か。何故物語りの始まりは、その「始まりの場面」なのだろう。その人物にも歴史があるのに、いきなり物語りはそこから始まる。何故その「始まりの場面」なのだろう。この作品は著者が自己をこの思い悩む小説家に投影しているように思う。どこかノスタルジーを感じる「時空を超えた冒険」もこの作品の肝だが、「物語りとは何か」と考えさせられる点もこの作品の見所である。是非手にとって、あなたにとっての「物語り」の正解をこの悩める小説家と共に見つけてみて欲しい。

夏のワクワクを取り戻せ


夏は本来、あなたにとってワクワクするものだったはずだ。やけに暑く、しかし夏を待ちわびワクワクしていたあの頃が、きっと本書を読めば思い出せる。本書を読んで是非、この夏、あなたも小学生だった自分を思い出してみて欲しい。

八月の博物館

  • 著者:瀬名 秀明
  • 出版社:角川文庫
  • 発売日:2003/6/25

モデルプロフィール

  • 名前:みお
  • 生年月日:1998/12/30
  • 出身地:北海道
  • 職業:大学生
  • 趣味:音楽鑑賞
  • 最近の悩み:湿気がすごい

(カメラマン:村井優一郎)

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WRITERこの記事を書いた人

yukako

大学生。出身は熊本県。熊本県民はくまモンをそれほど愛してないです。名前を漢字にすると、祐花子。お母さんが、お花が好きな優しい子になってほしかったみたい。将来は、カルチャーが持つ感動を世の中に伝えたい。趣味は読書(ただし小説とマンガ)。論理性も身につけるべきって思うけど、自分らしく感性で生きたいとか思っちゃう頑固。大学も、パンフレットのデザインで決めてしまった。エニアグラムタイプ4。