火花
- 著者:又吉 直樹
- 出版社:文藝春秋
- 発売日:2015/3/11
本書を一言で
本当のお笑い芸人を描いたら純文学だった。
「芸人の本」4冊目は、ミリオンヒットを記録した『火花』だ。ピースの又吉が執筆し、第153回芥川賞を受賞。芸人がこの栄えある賞を受賞したことは初めてで、一気に話題の本となった。
火花はどこが面白いのか。
漫才に対し、どこまでも純粋な二人の物語に答えがある。
俺の伝記を作って欲しいねん

若手の漫才師 徳永は、くすぶっていた。
熱海の花火大会の出し物で漫才を披露していたが、花火の音と被って何も聞こえない。つまりは事故みたいな漫才だ。明らかにタイムスケジュールが悪かったのだ。
「仇とったるわ」
そう一言を発し、細い目でどこか威圧感のある人が舞台に進み漫才を披露した。それが神谷さんだった。この物語の第二の主人公だ。
神谷さんはめちゃくちゃな漫才をした。
「俺は霊感強くて、その人間が天国に行くか地獄に行くか見えるねん」。
見物客一人一人を指差し、「お前が行くのは地獄! 地獄! 地獄! 地獄!」と叫び、会場の雰囲気がぶち壊しだ。漫才と花火の時間が重なった運営に対する復讐だったのだろう。
それが、徳永と神谷さんとの出会いだった。
帰りに神谷さんから声をかけられた徳永は居酒屋に行き、意気投合し、この人から全てを習いたいと決める。
「弟子にしてください」。
徳永がそう言った次に、神谷さんが
「条件つきや。俺の伝記を作って欲しいねん」。
ここから二人の師弟関係が始まる。
くすぶり、笑い、それでも漫才をする

売れていない芸人の日常を想像できるだろうか?
さすがお笑い芸人が書いたもので、くすぶりの描写のリアリティが半端じゃない。
自分たちがウケると思って必死に書いた漫才がぴくりとも笑われない恐怖、入らない収入、このままでいいのかという不安を飲んで和らげる毎日……
徳永は神谷さんにずっとついていった。
笑いを学び、カッコいいとは何かを学んでいった。
神谷さんの前では、僕は普段より格段にお喋りになった。聞きたいことが沢山あった。この人が全ての答えを持っていると思い込んでいる節が僕にはあったのだろう。
徳永と神谷さんが進む先には何があるのだろう。
人を幸せにしていく漫才という仕事は、自分たちを幸せにできるのか。まぎれもない純文学がここにあった。
火花
- 著者:又吉 直樹
- 出版社:文藝春秋
- 発売日:2015/3/11
モデルプロフィール

- 名前:児玉かほ
- 生年月日:1991/11/22
- 出身地:和歌山
- 職業:ボイストレーナー
- 受賞歴:No1. 歌姫決定戦セミファイナリスト
- 趣味・一言:ボイトレ生徒様募集してます
- Twitter:@KahoxAlice
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