魔の山 (上巻)
- 著者:トーマス・マン
- 出版社:新潮社
- 発売日:1969/2/25
「記憶に残る海外文学」4冊目はトーマス・マンの『魔の山』だ。
初めに言っておきたいが、この本はとても危険な要素を孕んでいる。
ドイツ屈指の教養小説として、ゲーテ『ファウスト』と並ぶ20世紀の代表的な文学作品の本書。教養小説と名売っているだけに、味わい深い言葉が数々並べられている。正直に言って、ストーリーなるものはほぼない。
次に、なんと言っても難解で分厚い本ということ。以上を、踏まえた上で『魔の山』に挑戦して欲しい。
その山に登ったら帰れないよ

舞台は1900年代初頭のドイツ。
造船会社に内定を貰っていたハンス・カストルプは、就職まで余暇ができたことでいとこのヨーヒアムに会いに行く。ヨーヒアムは結核を患った病人で、療養のため山の上にあるサナトリウム(療養)にお見舞いに行くというあらすじだ。
とりとめのない会話を続けるハンスとヨーヒアム。どちらも歳は20歳前半だ。
「最近の調子はどうだい、ヨーヒアム」
「ゆったりさ。ここにいると時間がゆったり流れるんだ。時間の概念が変わるんだよ」
長期の療養生活が長く続くと、3週間も一日と感じてしまうほど時はゆったりと流れていく。そうかぁと相槌をつくハンスだが、彼の身にも重大なことが発見される。
医者に見てもらったところ、ハンスも結核だったことが分かったのだ。
友人の見舞いに来ただけのハンスだったが、自身も療養につとめることに。
こうして結核患者たちがひしめくサナトリウムにまた一人、新たな患者が増えた。『魔の山』とは、一度療養しに入った患者は結核のため、決して下山することができないサナトリウムを指していたのだ。
魔の山で学ぶこと

別にサナトリウムに入ったからといって死の宣告を受けた訳ではない。
ゆったりと療養していく中で、生きる希望を見つけていけばいい。結果として、ハンスは7年間もサナトリウムで過ごすことになり、『魔の山』はそこで他の患者たちと広げられる会話がメインの小説だ。
登場人物で特に面白いのが二人。
イタリア人で人文主義者のセテムブリーニと、神の国を作ろうと本気で考えているナフタだ。この二人はしばしば作中で議論をし、いわば論敵の関係だ。
二人の意見は対照的。セテムブリーニは人は自由に生きるべきと説き、ナフタは戒律を守って原理主義的に生きるべきと説く。
教養小説というものは、作中で登場人物からさまざまな考え方を聞き、主人公がどう成長していくか、また読者に刺激を与えるのが目的だ。
どういう論が展開されていくのかは少し難解なのと、一部抜粋しただけでは余計掴みにくいから控えるが、面白いのは「時間」の概念だった。

魔の山にいると、長い間空虚な時間を過ごすことになる。
ただ昔の哲学者のように、労働もせず哲学に耽る毎日を送るハンス。しかし、そこに生きる意味を見いだせるのか。加えて、どうせ結核で死ぬ身なのに。
最後にハンスが取った行動は、読者への哲学的挑戦とも捉えられる。
時間があるときに本書にじっくり挑戦して欲しいと思う。
魔の山 (上巻)
- 著者:トーマス・マン
- 出版社:新潮社
- 発売日:1969/2/25
モデルプロフィール

- 名前:草田彩夏
- 生年月日:1996 8.20
- 出身地:東京都江戸川区
- 職業:青山学院大学法学部2年
- 受賞歴:.jp 未来自治体関東ブロック優勝
- ミス総理大臣コンテスト審査員賞
- 趣味・一言:バイオリンを弾くこと
- 興味のある事にチャレンジする事が大好きです!
- 最近の悩み:花粉症
- Twitter:@Kusamochi820
- Insta:kusada_ayaka
(カメラ:湯川うらら)
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