長い人生の最期に残った「言葉」と伝えたかったこと『生きていくあなたへ』

2017年7月18日、偉大な医師日野原重明先生が105年の人生に幕を降ろした。病を患い「死」という言葉に直面してから数年。それでも講演会の活動など、伝えることを止めなかった。言葉に支えられてきたと語る日野原先生が、言葉の杖を使って最期に伝えたかったことをまとめたのがこの1冊である。一問一答形式でとても読みやすく、人生の金言が心の奥底にじんわりと広がっていく。そして、ふとした瞬間にこだまするように甦ってくるのだ。本書にあふれている優しく背中を押してくれる日野原先生の言葉をいくつか紹介したい。

生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉

  • 著者:日野原重明
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2017/9/27

古い自分を受け渡すことで奇跡は起こる


「奇跡は特別な人にしか起こらないのか」という問いかけに、「奇跡はどんな人にも起こるもの」と答える日野原先生。では、どうしたら奇跡を手にすることができるのか。それは、自分の力ではどうしようもできないことに出くわしたときに、今まで自分が守ってきた自己の中心を手放し内的に生まれ変わることだという。熱心なキリシタンでもある日野原先生は、古い自分を抜き捨てた人に、神様は必ず救いの手を差しのべてくれると続けている。奇跡は限られた人に起こるモノではなく、誰にでも起こるもの。仕事や勉強でつまずいたときこそ、次の一歩を踏み出す勇気をくれる言葉だ。

人に甘えること、は豊かなこと

人に甘えることが苦手、という人は意外と多いのではないだろうか。迷惑をかけてはないけない、弱いところをみせてはいけない、とついつい一人で抱えこんでしまう。しかし、日野原先生は甘えることは豊かなことだ、と表現している。甘えには2つの種類がある。自己を持っていない人が他人を当てにするだけの甘えと、一生懸命生きている人が他人に身を委ねる甘えだ。後者の甘えは人生を豊かにするためには不可欠なもの。「戦っているからこそ、甘えられる。そんな心境で、自分を委ねられる人がいることは僕たちの人生を幅広く豊かにしてくれる。」甘えることは、豊かなことだ。この一言を聞くだけで、肩の荷が降りたのは私だけではないだろう。

「死」とは新しい始まり

長年、聖路加国際病院にて院長をしていた日野原先生は多くの死と向かい合ってきた。そして、本人も延命治療を拒否し、死と向き合わなければならない状況に。それでも、長生きは素晴らしく、人生の午後を楽しめるのは幸せなことだと話してる。
では、死ぬのは怖くないのか。この問いに日野原先生はこう答えている。

「死そのものはこわいのですが、そこで人生のすべてが終わるという感覚よりも、新しいものが始まる予感の中にいます」

それは日野原先生がたくさんの親しい人たちを亡くすなかで、亡くなった後のほうが、生きていたころよりも鮮やかに存在するという経験を重ねてきたからだ。死とは、新たな始まり。故人にとってはもちろんのこと、誰かの中で鮮明に生き続けるという、新しい人生の始まりなのかもしれない。

105年生きてみても自分のことが分からない


105年生きてみても、自分自身のことは分からないと日野原先生は語る。本書の最後には「生きていくあなたへ」と名付けられた日野原先生本人による最期のあとがきが寄せられていた。死を静かに受け入れようとしていた日野原先生が、それでも人生は素晴らしいと伝えたかった言葉をどうか噛みしめてみてほしい。
「エンカウンター」日野原先生が一番好きな言葉だそうだ。エンカウンターとは出会いを意味する。人生には不思議で素晴らしい出会いが溢れている。

2018年を迎える前に、この1年を振り返りながら日野原先生が残した言葉の杖に触れてみてはどうだろうか。

生きていくあなたへ 105歳 どうしても遺したかった言葉

  • 著者:日野原重明
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2017/9/27

モデルプロフィール

  • 名前:市川 ありさ
  • 生年月日:1997/3/29
  • 出身地:千葉県
  • 大学名:慶應義塾大学
  • 受賞歴:ミス慶應SFCコンテスト2017ファイナリスト
  • 趣味/一言:カフェめぐり
  • 最近の悩み:予定がカツカツなこと
  • Twitter:@mskeiosfc17no_1
  • blog:https://misscolle.com/keiosfc2017/profile/1

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WRITERこの記事を書いた人

そらい なおみ

言葉、コラージュ、写真等の作家活動を通じて大切な何かを伝えられたらと思っています。 2015年東京銀座にて個展開催、2016年ロンドンでの企画展参加。ライターとしても精力的に活動中。 幼い頃から「本」を通じて大切な感情を学んできました。その分「本」を通じて「本」に恩返しが出来るといいなぁと思っています。