老獪な悪魔と生意気な少年魔術師『バーティミアス』

バーティミアス

  • 著者:ジョナサン・ストラウド
  • 出版社:理論社
  • 発売日:2003/12/13

 

1週間に一つの悩みを設定し、解決に役立つ7冊を紹介してきた本to美女でありますが、今週は「解決」なんて気張らずに気楽にやっていこうと考えています。

今週のテーマは、「秋の夜長に感じてしまうそこはかとない寂しさを埋める本」として、私が面白かったなあと思った本を取り上げていきます。

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そういうわけで、これから書いていく文章の言いたいことはたった一つ。

「面白いから読んでみて」

気づいたら日が昇っていた

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物語に集中するあまり、気付いたら日が昇っていた、という経験を人生で初めてしたのが本書「バーティミアス」です。当時私は小学生で、徹夜をするどころか毎日20時にはお布団に入るような生活をしていたので、カーテンから朝日が溢れているのを見た時は「えっ、どういうこと?」と一瞬何が起こったのか理解できないでいました。時計の針を見て、「あっ、朝まで本読んじゃったんだ、今日学校行くのどうしようかな」と思ったことも今となっては良い思い出です。

当時の私の周りではハリーポッターが大ブームで、同級生たちは教科書をロッカーに置いておき、ランドセルに分厚いハリーポッターシリーズを入れて、学校でも家でも読むというのが流行っていました。俺は私はみんなと同じは嫌、という子たちは比較的薄く軽かったダレンシャンシリーズを颯爽と持ち歩いていたこともよく覚えています。他にもデルトラクエストやブレイブストーリーなどの物語が人気を博し、新刊が出るたびに友達と興奮しながら感想を言い合ったのを今回書評を書くにあたり思い出しました。

そんな環境の中で私が「バーティミアス」を手に取ったのは、新聞広告に載っていた表紙に言い知れぬ魅力を感じたからです。真っ赤な背景の真ん中に悪そうな悪魔が鎮座しているこの表紙に「何か面白そうな気配がする」と感じた私はすぐさま近所の本屋に駆け込むも在庫がなく取り寄せになってしましました。

1週間後、やっと届いた本に心躍りながら家へと帰り、布団の中で読み始めたら朝になってしまったというわけです。

引力の正体は?

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一体どんなところに幼い私は心惹かれていたのか、大人になった今の私なりに分析をしたいと思います。

物語の主人公ナサニエルは、少年漫画にありがちな熱血系とは真逆のタイプのキャラクターです。死人並みに青白く頼りない外見に、臆病な自尊心と尊大な羞恥心からくるひねくれた何とも可愛げのない性格というおよそ主人公言えないような人物です。

12歳のナサニエルは見習い魔術師として師匠に魔術を習いながら、将来は立派な魔術師となるべく日々勉強をしていました。そんな修行の日々の中で、ナサニエルはあるエリート魔術師に辱めを受け、必ずや復讐をし自尊心を取り戻してやろうと決意します。自分の力量を超えて精一杯の背伸びをして妖霊界から召喚したのが中級レベルの魔神バーティミアスです。

このバーティミアスというキャラクターが私は大好きです。5010歳というベテランの魔神で、幼いナサニエルを時にはいじめながら、時には「しょうがねえなあ」と憎まれ口を叩きながら手助けをし、ナサニエルの無理難題をなんとかこなしていく知恵に感動していました。術式によって妖霊を縛ることが出来る魔術師は、たいていの場合傲慢で妖霊からしたら憎むべき存在であり、両者の関係は殺伐としたものとして描かれています。妖霊も術式に不完全なところがあればすぐさま術者を殺してやろうと眈々とその命を狙っており、魔法という憧れの力に伴うリスクを感じさせるシーンが数多く登場します。しかし、ナサニエルとバーティミアスの関係には、一筋縄ではいかないながらもお互いを思いやるような暖かさがあり、種族や契約を超えた信頼に心地よさを感じていました。

へっぽこ魔術師のナサニエルが必死で成長していく様に自分を重ねながら、なんだかんだ頼れるバーティミアスのような存在がいてくれたらなあと羨みながら、次々と起こる事件と現れる強敵との戦いに引き込まれていきました。

こういう2人の関係性がこの物語の大きな魅力の一つだと私は思っています。

変わり映えのしない日々に疲れた時は、妖霊と少年の織り成す物語にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか。

 

バーティミアス

  • 著者:ジョナサン・ストラウド
  • 出版社:理論社
  • 発売日:2003/12/13

モデルプロフィール

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  • 名前:川原あやか
  • 生年月日:1993/11/16
  • 出身地:福岡県
  • 職業:会社経営
  • 趣味:ディズニーに行くこと
  • Twitter:@ayacho1116
  • サイト:http://giselle-design.com

(カメラマン:伊藤広将)

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