
息をのみました。現実離れしているのに親しみが湧く独特な登場人物、絵画の画集を見ているかと思うくらい繊細で幻想的なイラスト、子どもが読みやすい内容なのに大人も涙ぐませるストーリー。
ここまで、こだわり抜かれた絵本に出会ったことがあるでしょうか。いや、これを、単なる絵本と呼んでいいのかもわかりません。
今回は、老若男女を惹き込み、今、最も世を賑わせている『えんとつ町のプペル』をご紹介します。
えんとつ町のプペル
- 著者:にしのあきひろ
- 出版社:幻冬舎
- 発売日:2016/10/21

ソラを、ホシを、夢見て
物語の舞台は、4000メートルの崖に囲まれた、「外の世界を知らない町」。町はどこもかしこも、えんとつだらけ。毎日モクモク灰色の煙があがるものだから、町は灰色の雲に覆われています。この町の住人は誰も、「ソラ」を見たことがないのです。
町に唯一、「ソラ」を信じる少年がいました。彼の名前は、ルビッチ。丸顔、下まつげ、そばかすが特徴の、愛らしい姿をしています。
–煙のうえには「ホシ」がある。
そう教えてくれたのは、ルビッチのお父さんでした。彼はえんとつ町で唯一、漁師として働き、唯一、「ホシ」を見た人でした。航海の中で、雲の切れ目から光りを見たのです。しかし、彼の話を信じる町民は一人もいないまま、ルビッチのお父さんは波にのまれて、帰らぬ人となってしまいます。
お父さんの残した言葉は、ルビッチの心に焼き付いていました。
「信じぬくんだ。たとえひとりになっても」。

ルビッチとプペル
ある夜、その「ソラ」から、心臓が、えんとつ町のはずれのゴミ山に落ちました。ドクドクあばれる心臓に、ゴミがくっつき、人のような形をした「ゴミ人間」が生まれます。
「人のような」といっても、体は傘やホウキ、ぼろ布のつぎはぎなどで出来ていて、鼻をつまみ、息を止めずにはいられないほどの異臭を放っていました。
ハロウィンの日にゴミ人間に出会ったルビッチは、彼にプペルという名前を付け、庭で体を洗ってあげました。
「なんだかなつかしいニオイがするんだよ。ぼくがすてたパンツでもまじってんじゃない?」

信じ続けた先に
ある日、ルビッチは、何回洗ってもくさいままのプペルと一緒にいることで、町の子供たちにからかわれます。ひどい言葉を浴びせられたルビッチは、悔しくて、プペルに強く当たってしまいます。
「もうキミとは会えないよ。もうキミとはあそばない」
「ごめんよ、ルビッチ」
ふたりが会うことはなくなり、何日も経ちました。体を洗わなくなったプペルはどんどん汚れ、壊れていきます。
このまま2人の関係が終わるかと思えた、ある静かな夜でした。
すっかり変わり果てたボロボロのプぺルが、ルビッチの前の姿を現します。
「いこう、ルビッチ」
プペルは、ルビッチをどこへ連れて行きたかったのか。2人は、何に気がつくのか。
物語の結末は、切なくて、苦しくて、嬉しくて、哀しい。
この余韻に浸るひとときは、格別でした。

『プペル』は、現実の世界の風刺
異世界ファンタジーとして読み応えのある本作品ですが、
実は、私たちの現実社会の大きな問題や課題が、織り込まれている物語なのです。
作者の西野さんは、こう語っています。
えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺。
そして、「夢を見る」「夢を語る」「行動する」といった、大人になる過程で皆が折り合いをつけて捨てたモノをまだ持ち続けているという意味で、主人公を《ゴミ人間》にしてみました。
「ソラ」という概念がない世界で、輝く「ホシ」を追い続けるゴミ人間とえんとつ掃除屋。
嘲笑われながらも、まっすぐ、何かを信じ、自分らしく生きれる世界。
西野さんが求める理想の社会の姿が、ルビッチとプペルの生きざまから伝わってきます。
作者の西野亮廣さんは、作品を無料で公開しています。
→http://spotlight-media.jp/article/370505056378315909
えんとつ町のプペル
- 著者:にしのあきひろ
- 出版社:幻冬舎
- 発売日:2016/10/21
モデルプロフィール

- 名前:Eri
- 生年月日:1992/08/20
- 出身地:静岡県
- 職業:本to美女専属モデル
- 趣味/一言:梅酒をつくっています
- 最近の悩み:早起きが苦手です
(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/)
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