一度目に入ったら忘れられないタイトルや、美しい装丁で話題をさらった『君の膵臓をたべたい』。実写版も公開されたこの物語、あなたは読んだことがありますか?
君の膵臓をたべたい
- 著者:住野よる
- 出版社:双葉社
- 発売日:2017/4/27
秘密を知ったのは、【地味なクラスメイト】くん
ふたりの物語がはじまったのは、病院でした。【地味なクラスメイト】くんはある日、ロビーのソファに置き去りにされた1冊の文庫本を見つけます。好奇心からそれを手に取ると、題名があるはずの場所には「共病文庫」という手書きの文字が。この文庫本は、病と共に生きる日々を綴った日記だったのです。気まずい思いを抱いた【地味なクラスメイト】くんは、気づかないうちに側に来ていた本の持ち主に声をかけられます。
彼に声をかけてきたのは、「明るく溌剌としたクラスメイト」の山内桜良。彼女は膵臓の病に侵されており、長くは生きられないのだと、どこか可笑しそうに打ち明けます。たったひとりの【秘密を知ってるクラスメイト】となった彼の毎日に、彼女が飛び込んできたのです。
「共病文庫」に綴られていく、ふたりの日々
友達がいたことも、欲しいと思ったこともない【秘密を知ってるクラスメイト】くんと、クラスで人気者の彼女。正反対のふたりなのに、いや、正反対のふたりだからこそ、彼らは秘密の共有をとおして仲のいいクラスメイト同士になっていきます。焼肉食べ放題や、新幹線での旅行。【仲良し】くんと彼女の日々は、ふたりを繋げた「共病文庫」に書き留められていきます。
たまたま【仲良し】くんが見てしまった以外は、死ぬまで誰にも公開されない彼女の「共病文庫」。彼女にとっての特別な出来事や心を動かした出来事が、そこには記されていきます。絵を描いたり写真を貼ったりすることはなく、本物の文庫本のように、黒い文字で埋まっていく「共病文庫」。そうして刻まれていく彼女との日々を、【仲良し】くんはまるで小説のように感じていました。彼女の病によって最後のページが決まっている、小説のように。
しかし、彼女の物語は「残り数ページを白紙にしたまま終わって」しまいました。彼女の人生は、もともと決まっていた物語のフィナーレをなぞることなく、終わってしまったのです。
彼と彼女の過ごした日々は、決して物語などではありませんでした。彼女の死によってそれに気づくのは、彼だけではありません。彼女の人生がどのように終わったのかを、この小説を読んで知るあなたも、この事実に気がつくのです。彼が最後まで読みたかった、読むつもりだった彼女との「物語」は、決して保証されたものではなかったと。
「君の膵臓を食べたい」
この小説には、「膵臓ネタ」が幾度となく登場します。昔は病気になった臓器と同じ動物の臓器を食べていた、という迷信を知った彼女が彼に向けて言う「君の膵臓を食べたい」。牛の膵臓はシビレだと、焼き肉食べ放題で告げる彼女。火葬は嫌だから死んだら私の膵臓を食べて、という彼女に、君の膵臓は騒がしそうだから嫌だと答える彼。
彼らの最期の「膵臓ネタ」は、完成されず終いのメールのやりとりでした。彼女が死んでしまった今、もう返事は返ってこない。彼女が何を返そうとしていたのかはもちろん、他のことだって、もう何も知ることはできない。
……いえ、たったひとつ、彼にはその手がかりを与えてくれるかもしれないものがありました。「共病文庫」です。最期のページに届かないまま終わってしまった「共病文庫」が、何かを伝えてくれるかもしれない。しかし、彼女の家へ向かい「共病文庫」を開いた彼を待っていたのは、期待していたものではありませんでした。それでも、「共病文庫」に記された彼女の言葉は、彼を変えていきます。いえ、彼女は生きていたときからずっと、彼のことを変えていたのです。
彼がおおきく変わった瞬間に明かされる、本当の名前。彼はもう【地味なクラスメイト】くんでも、【目立たないクラスメイト】くんでもないのです。小説ではあるけれど、小説のような物語ではなかった彼と彼女の物語を見届けたあなたには、彼の名前に感じるものがあるはずです。
君の膵臓をたべたい
- 著者:住野よる
- 出版社:双葉社
- 発売日:2017/4/27
こんな人にオススメ!
・ありきたりな“お涙頂戴”小説には飽きてしまった人。
・生きることに積極的になりたい人。
・温かい気持ちを感じたい人。
モデルプロフィール

-
名前:KiKO
-
生年月日:4月29日
-
出身地:宮城県
-
職業:大学生
-
趣味:音楽鑑賞
-
一言:ライブに行くのが好きです
-
最近の悩み:寝起きが悪いです…
(カメラマン・湯川うらら)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします