『ポスト・ヒューマン誕生』

ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき

  • 著者:レイ・カーツワイル
  • 出版社:日本放送出版協会
  • 発売日:2007/01

 

「Singularity シンギュラリティ  特異点」

シンギュラリティという言葉を聞いたことがあるだろうか。
著者の定義によれば、「テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来のこと」だ。

人間の作り出したロボットが人間の命令に逆らい暴走する、そんな映画を見たことがある人もいるだろうが、本書で語られる未来図はそうしたディストピア的なものではない。かといって人間が労働から解放され、不老不死になり、全員が幸福のうちに生きていくというような理想郷のような未来図を描いているわけでもない。

本書の著者であるレイ・カーツワイルはアメリカの著名な発明家であり、12の名誉博士号を持ち、3人の大統領から賞を贈られているテクノロジーに精通した人物だ。

華々しい経歴を持つ人物が必ずしも正しいことを言うわけではないが、シンギュラリティに関する彼の見解は私たちがこれからの未来を思い描く際に大きな影響を与えることは間違いないだろう。カーツワイルは1990年に刊行した書物の中ですでにワールドワイドウェブの出現を予言したり、1998にコンピューターがチェスのチャンピョンを負かすことを予言していた人物であるからだ。彼の未来予測には耳を傾ける価値があると言っていいだろう。

一見荒唐無稽に思えるシンギュラリティに関して、まずはその主張の根拠として彼が挙げている収穫加速の法則について簡単にご紹介しよう。

1.シンギュラリティに至るまでの道のり~収穫加速の法則~

kita1

既存の概念がすべて崩壊してしまいかねないシンギュラリティという概念の根本には、次のような考え方が存在している。
人間が生み出したテクノロジーの変化の速度は加速していて、その威力は、指数関数的な速度で拡大している、というものだ。
指数関数的な増加とは、例えば今まで10000年の間に起こっていた技術革新と同数の技術革新が次の100年で行われ、さらにその次の1年で起こってしまうような急激な変化を招く可能性のあるものである。

集積回路上のトランジスタの数は1年半ごとに2倍になるというムーアの法則をコンピューター以外の発明や出来事に対しても当てはめたのが収穫加速の法則だ。

生命が誕生してから多細胞生物が生まれ、人間をはじめとする高等動物が現れるまでには数十億年の歳月を要した。種々の化学物質から生命が誕生したこともこの宇宙における革命であり、そこから小さな変化を悠久の時の中で積み重ねて現在の私たちは存在している。

生命誕生からコンピューターが登場するまでの生物の進化と人間のテクノロジーの進化を対数グラフに表してみると、おおよそ直線と言っていい形になるというのがカーツワイルの主張の根拠となっている。
つまり、革新的な出来事が起こるスパンは次第次第に短くなっていき、ある一定の時点を超えたところでその期間は0へと近づく、もしくはある一定の時点でテクノロジーの進化は想像を絶するスピードで進むことになるということだ。

こうした転換点をシンギュラリティ、特異点と呼び、その時点でどんなことが起こるのかを考察していくのが本書である。
シンギュラリティをもたらすテクノロジーの進化についての詳細な解説と、シンギュラリティが私たちに与える影響についての予測が本書の大きな2本柱となっている。

シンギュラリティのその先には何が待っているのか。想像を絶することを想像しようという取り組みはこの上なく刺激的な知的遊戯である。

2.シンギュラリティのその先へ

本書の日本語タイトルは「ポスト・ヒューマン誕生 コンピューターが人類の知性を超えるとき」であるが、原著タイトルは「The singularity is near : When humans transcend biology 」となっておりその意味することろは「シンギュラリティはすぐそこに:人間が生物を超越する時」といったものになるだろう。
つまりシンギュラリティを経て人間は生物を超越した存在になるというのだ。

人間を超越した存在とは果たしてどのようなものなのか。想像のヒントとなるのはそれをもたらす3つのテクノロジー、すなわち遺伝学、ナノテクノロジー、ロボット工学だ。
遺伝学は、私たちの身体を構成している生命活動プログラムを改変することによって病気の撲滅や寿命の延長を可能にする。

ナノテクノロジーは、人間の体を分子一つ一つのレベルで再設計・再構築することを可能にし、物質の制約を乗り越え、生物としての限界を超越することを可能にする。
ロボット工学は人間の知能をモデルにしながらも、人間よりも遥かに性能の高い知能を実現し、あらゆる障害を乗り越える力を持つことを可能にする。

人間を作るもととなる情報を書き換え、さらにその上に追加の機能を付加し、それらを制御する知能を進化させる。
こうして人間は物質と知能の限界にとらわれない存在へと変わっていくというのがカーツワイルの予想だ。

こうしたシンギュラリティに関する予想をすべて信じなさいとは決して言えない。しかし起こりうる未来をどのように生きるかを考えていく際の指針として用いることはできるだろう。

インターネットが世界を覆い、必須のインフラとなっていることをインターネットが誕生した直後に予測していた人は一体どれだけいたのだろうか。
未来を予測することの困難さを忘れることがないようにこの言葉で締めくくりたいと思う。

「誰しも、自分の想像力の限界が、世界の限界だと誤解する。」
~アルトュル・ショーペンハウアー~

まとめ

  1. テクノロジーの進化は直線的なものではなく指数関数的なものであり、自分の経験則を上回るスピードで革新的な出来事が起こっていく可能性が大いにある。
  2. シンギュラリティへとつながる技術はすでに存在しており、従来の人生や社会に対する概念が根底から覆される可能性がある。
  3. 理想郷や地獄といった単純な将来予想に甘んじることなく、現状を見定め、次にとるべき行動は何なのか考え抜いておくこと。

ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき

  • 著者:レイ・カーツワイル
  • 出版社:日本放送出版協会
  • 発売日:2007/01

モデルプロフィール

DSC_3475のコピー
  • 名前:喜田紗也香
  • 生年月日:1994/2/25
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:会社員(給与計算業務)
  • 受賞歴:ミス日大文理2014ファイナリスト
  • 趣味:ダンス、ブリッジ
  • 最近の悩み:名刺交換がうまくできないこと
  • Twitter:@ohrei_missno4

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

本to美女選書