『これが物理学だ!』物理学のレンズを通してみる新しい世界

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先達としての覚悟

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「物理学」という言葉を聞くだけでアレルギー反応を起こしてしまう人も多いのではないか。一応は取り組んでみても、難解な数式に圧倒され、物理学は一部の優れた人間のための学問なのだと諦めてしまった人もいるだろう。待て待て、物理学はこの世界の美しさを記述する深遠な芸術だと言う人もいるだろう。

物理学にどのような感情を抱いていようとも、本書の著者であるウォルター・ルーウィンの手にかかれば、まるで魔法にかけられたように物理学に魅せられるに違いない。

世界最高峰の大学であるマサチューセッツ工科大学(MIT)で教鞭をとるウォルターは、X線宇宙物理学における一流の研究者でありながら一流の教育者でもあるのだ。そんな彼の信念を表す言葉を紹介しよう。

「教える者にとって大切なのは、知識を箱にしまい込むことではなく、箱のふたを開くこと!」

たとえ授業の内容をすべて忘れてしまったとしても、物理学を通して見た世界の美しさに心動かされたことは一生忘れないだろう。そうした感動をもたらすことこそが自分の役目であるとウォルターは語る。

そんな彼の信念の表れがインターネット上で話題になっている「物理学1」の講義映像だ。実演を交えながら、そして時には自分の体を張りながら展開される講義はMITの学生たちの間で絶大な人気を博し、一度インターネット上に公開されると、世界中に数え切れないほど多くのファンが誕生した。

振り子の周期が錘の重さに関わりなく一定であることを示すために自身で錘にぶら下がってみたり、エネルギー保存の法則に全幅の信頼を寄せていることの証明として、15kgの鉄球を顎の下から離して振り子の帰りを待ってみたり、電荷の存在を示すために自分の体を帯電させたりしながら、物理学が記述する世界の美しさを説いていく講義はとてもワクワクするものだ。

そして彼はこうも言っている。

「教える者が何より避けたいのは、学生は愚かで自分は賢いという驕りを、学生たちに感じさせてしまうことだ。」

まだ幼かったあの頃、夢中でボールを追いかけていた時、初めてピアノを弾いた時、自分と一緒に楽しみながらたくさんのことを教えてくれた人がいたことを皆さんは覚えているだろうか。知らなかった頃とは世界が違って見えるような、自分にとってかけがえのないものを教えてくれた人のことを。
ウォルターはそんな優しい大人の一人だと、僕は確信している。

さあ、ウォルターとともにめくるめく物理学の世界へ踏み出そう!

 虹の秘密

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身の回りのちょっとした不思議の多くを、実に見応えのあるものかもしれないのに、たいがい見逃してしまうのは、観察眼が養われていないからだ。

この一言から始まる第5講「虹の彼方に 光の不思議を探る」が僕の一番のお気に入りである。
なぜ虹は様々な色でできているのか、なぜ虹は弓形なのか、虹を見つけるにはどうすればいいのか、こうした疑問にウォルターは見事に応えていく。そして本書の特徴の一つであるのだが、難解な数式は一切使うことなく世界の裏に潜む原理を解き明かしていく様子は、見事の一言に尽きる。

すべての講義は妖艶な光を放つ着物のように、一つ一つの現象が、探求過程が、法則が、巧みに織り合わされて一つの作品となっている。作品全体を体験することで物理学のおもしろさをより実感出来るのだが、作品の美しさを損ねないように注意しながらその一部を紹介しよう。

自然界の最も美しい創造物の一つである虹の原理を初めて説明したのは、かの有名なアイザックニュートンだ。1704年に「光学」を彼が記すまで一千年にわたり科学者を惹きつけ、理解を拒み続けてきた虹の原理は、この時初めて解明されたのである。

ウォルターは虹を見るための3条件を挙げながら光学の基本原理を説明していく。第一に太陽があなたの背後にあること、第二にあなたの正面の空に雨粒がなくてはならないこと、第三に日光が雲のような障害物に遮られることなく雨粒に到達すること、のそれぞれがなぜ必要なのかを通して光の正体に迫っていく。

小学生でも分かるような図形による説明から、光は粒子か波かという長年物理学者たちを悩ませてきた問題に対しても切り込んでいく。

ここで簡単な虹の見つけ方についても紹介しよう。

ポイントとなるのは角度だ。

まず太陽を背にして立つ。そうするとあなたの影が地面に映る。正立した状態で、あなたの目から影の頭頂部までをつなぐ線を仮想線と名付けよう。この仮想線の上下左右から42度離れた位置に虹は見つかるはずだ。

雨の前後や天気雨の降る時など、虹の3条件が満たされるような状況に遭遇したら是非試してみてほしい。
そしてこの虹を見つけるための角度、42度という数字こそ虹が弓形である理由でもあるのだ。仮想線から上下左右の全方向に42度の曲線を描くと弓形になることがわかるだろう。

この42度という数字は虹を構成するそれぞれの色の光の波長に由来している。波長と屈折角の関係に関する詳細な説明は本文をご覧いただきたい。過去に物理の授業で習った時よりも分かりやすく、楽しみながら理解できるに違いない。

虹の色について、虹の形について、虹の見つけ方について光の原理に基づく理解を得たあなたは、虹を見たときにこれまでとは違った美しさに気づくことだろう。

日常の感動を大切に

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先人たちの足跡を振り返ると、新たな世界の見方を私たちにもたらしてくれたのが物理学だとウォルターは語る。そして新たな視点を獲得した後には、今までとは全く違う世界が見えてくる。

この世界に隠された美しさを見逃さないように、そして美しさに心動かされたことを忘れないように、自分の周りをゆっくりと見渡すだけの心の余裕と知識に裏打ちされた観察眼をもって、あなたが豊かに日々を送れることをウォルターはきっと願っている。

今日のポイント

  • 物理学を理解すると、世界に対する新たな見方が出来るようになること
  • 新たな視点を獲得することは世界の美しさに気づくきっかけとなること。その点では物理学と芸術は通ずるものがある。
  • もしも心動かされるものがあるならば、それこそがあなたが始めるべき新たな取り組みだということ。感動こそが継続する努力の源だ。

これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義

  • 著者:ウォルター ルーウィン
  • 出版日:2012/10/13
  • 出版社:文藝春秋

モデルプロフィール

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  • 名前:原瑠理子
  • 生年月日:1991/03/24
  • 出身地:福岡県
  • 職業:お茶の水女子大学院生
  • 一言:ソフトバンクファンです!

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