最も詩的でロマンに満ちた数学物語『素数の音楽』

素数の音楽

  • 著者:マーカス デュ・ソートイ
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2013/9/28

本書を一言で

素数の謎を解き明かせ!数学者たちが繋ぐ証明へのバトン

こんな人におすすめ!

・数学コンプレックスを持っている人
・大未解決問題 リーマン予想のことが知りたい
・物語のように数学のことを知りたい

文系の数学コンプレックスを解消させる面白い本はないものかと探していたところ、『素数の音楽』というものに出会った。
著者曰く、

誰でも物語が好きだ。そこでわたしは殺人事件を扱った推理小説のような本を書こうと考えた。数学の謎を解くことは、殺人事件の犯人を割り出すのと似ている。

本書は、数学界でも最大の未解決問題、「リーマン予想」に挑んでいく数学者たちの話だ。
数学の知識などは必要ない。ただ、純粋な好奇心を持って、「証明へのバトン」が次世代に渡されていく美しさを追うだけでいい。

素数とは「神秘の数字」である

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この本を読み終わって余韻に浸り、思わずぽろっと出てしまった言葉が次のものだ。
「素数とは不思議なものだ」
我ながら驚くぐらいの間抜けっぷりだが、そうとしか言えない素数の神秘を感じた。

2, 3, 5, 7, 11, 13, ……と無限に続いていく素数。

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文系の私にとって一番馴染みのある素数といえば、『ジョジョの奇妙な冒険』のプッチ神父がピンチのときに素数を考えるこのシーンだ。孤独な数字……偶然にも、この言葉が本書にも通ずるとは知る由もなかった。

ここで、素数について思い返して欲しいのだが、素数の出現に法則性があるだろうか?

興味深いデータがある。1からNまでの間にある素数の個数をまとめたものだ。

N                                                     素数の数
10                                                   4
100                                                25
1,000                                           168
10,000                                        1,229
100,000                                     9,592
1,000,000                                 78,498

数学者ガウスは、このデータを見つつ「何か素数の出現に法則があるかもしれない」と直感で感じたのが、リーマン予想物語の幕開けだ。
数学者たちは、原始から素数の謎を解明できないでいた。「素数」とは私達がコントロールできない究極の領域であり、出現のルールはないとされていた。ここにもしや…?と疑問を抱いた素数大好き数学者ガウスが挑戦状を叩きつけたのだ。

リーマン予想とは

「素数の出現に法則性があるかもしれない」とする最大の数学テーマを証明するため、リーマンが立てた大予想を「リーマン予想」と言われる。
次が正式なリーマン本人が論文に書いた予想だ。

ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する。

なんのことかさっぱりだと思うが、これを理解できなくても全く問題ない。
先に書いたガウスの素数予測を完璧にするため、リーマンは補完予測を立てたのだ。これはすごいことで、リーマンの予想が証明されれば長年ブラックボックスとされていた素数の出現を予想できることになる。

数学者が繋ぐ「証明へのバトン」

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繰り返すが、素数の出現を予想できることはすごいことだ。
「リーマン予想」が正しいと前提に書かれた論文は多くあり、本書でも紹介されているが、それらの論文も新たな数学的発見に満ちているものばかりだ。でも、それらの論文が完全に信用されることはない。何故か。

「リーマン予想」が完全に証明されていないからだ。

「予想」とは証明されなければ、「定理」にはならない。定理とは永久不変のルールで、これを見つけたものは未来永劫、数学を愛する者たちに愛される。
数学が一歩未来に前進するために、「リーマン予想」は人類の叡智を集めてでも証明しなければならないのだ。

この問題に対し、クレイ数学研究所は「リーマン予想を証明した者には、100万ドルの懸賞金を出す」と約束し、いわゆるミレニアム懸賞問題の筆頭になっている。そして、ここが最も興味をそそるのだが、今でも「リーマン予想」は解決していない。

1859年の「リーマン予想」発表から今日まで、この予想を解くことは数学者にとって憧れであり、言わば真理のエベレストといっていい。数学の物語の中でも、ロマン度で図る物差しがあるとすれば、間違いなく”最もアツい証明ロマン”だろう。

リーマン予想は終わらない。

ガウスの素数定理、ヒルベルトの革命的問題提起、ハーディー・リトルウッド・ラマヌジャンの共闘、モンゴメリーとダイソンの数学×物理学の化学反応、そして2000年にクレイ研究所がミレニアム問題として100万ドルの懸賞をかける……次のバトンは誰が繋ぐのか。いつか、素数の神秘を解き明かされる日は来るのか。

数学者の研究を結晶化させたような本書は、数学をテーマにしながら、最も詩的でロマンに溢れているのは皮肉としか言えない。数学嫌いの読者にこそ、読んで欲しい一冊だ。

素数の音楽

  • 著者:マーカス デュ・ソートイ
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2013/9/28

モデルプロフィール

yuri_kimura_profile
  • 名前:木村優里
  • 出身地:茨城県
  • 職業:学生
  • 受賞歴:日本パラオ国際親善大使2015
  • 趣味・一言:ラーメン屋さん巡り
  • 最近の悩み:またちょっと太ってしまったこと。

(カメラマン・伊藤広将)

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Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

小幡 道啓

累計2億円以上の借金王の元に生まれ、怒号と罵声が飛び交う家庭で育ったアウトローだが、底ぬけにポジティブ。飲み会でも「父親が行方不明です」と不謹慎なネタを言ってはスベっている。Amazon Kindle販売員時代には年間NO.1売上を達成。現在は、「逆境でのユーモア」をモットーに本to美女編集部編集長。