プロとはどんな人間か『職業としての小説家』 

職業としての小説家

  • 著者:村上 春樹
  • 出版社:新潮文庫
  • 発売日:2016/9/28

本書を一言で

小説を書くことに関する見解の集大成。

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文章力の悩みを少しでも解消するべく本を紹介してきた。最後は小説家である村上春樹氏に教わろう。

村上春樹氏曰く、5~6年前から誰に言われるでもなく自発的に、自分がどのような思いをもってこれまで歩んできたかを、こうして小説家として小説を書き続ける状況について、できるだけ具象的に、書き留めておきたかったそうだ。

35年あまりこうして小説家として小説を書き続けている。この事実にいまだに自分自身驚いている。本書で語りたかったのは、この驚きであり、この驚きをできるだけピュアなまま保ちたいという強い思いについてであった。

自分自身小説家だということに驚いている村上春樹氏。今でも数々の名作を世に出す小説家が語る「小説家」とはなんなのか。

「ごく普通の人間」であっても、「最も重要な日本の現代作家」

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村上氏は「小説家であること」について、こう言っている。

しかしリングに上がるのは簡単でも、そこに長く留まり続けるのは簡単ではありません。小説家はもちろんそのことをよく承知しています。小説をひとつふたつ書くのは、それほど難しくはない。しかし小説を長く書き続けること、小説を書いて生活していくこと、小説家として生き残っていくこと、これは至難の業です。普通の人々にはまずできないことだ、と言ってしまっていいかもしれません。そこには、なんと言えばいいのだろう、「何か特別なもの」が必要になってくるからです。(中略)
 この「資格」についてはまだ多くのことは知られていないし、正面切って語られることも少ないようです。それはおおむね、視覚化も言語化もできない種類のものだからです。しかし何はともあれ、小説家であり続けることがいかに厳しい営みであるか、小説家はそれを身にしみて承知しています。

村上氏は自分は「ごく普通の人間」だと言う。
小説を書く資質みたいなものは元々いくらか備わっていただろうと思う。しかしそれを別にすれば、どこにでもいる普通の人間だ。街を歩いても目立たないし、レストランではたいていひどい席に案内される。自分自身、日常生活の中で、自分が作家だという事実を意識することなどない。

だが、たまたま小説の書く資質を少しばかり持ち合わせていて、幸運みたいなものにも恵まれ、またいくぶん頑固な性格にも助けられ、35年間あまりこうして職業小説家として小説を書き続けている。

村上氏の日常についての話を読むたびに痛感するのは「小説を書く、書き続けるというのは、精神的にだけでなく、肉体的にも負担がかかる、地道な作業なのだな」ということだ。

村上氏がマラソンやトライアスロンを続けているのは、よく知られているのだが、村上氏は「精神力というのは、ある程度の体力がないと維持し続けるのは難しい」ということを自覚し、ストイックなトレーニングを続けている。

三島由紀夫は他人に見せる肉体をつくるためにボディビルに励んだけれど、村上春樹は、小説家としてリングに上がり続けるために、トレーニングを行っている。

あくまで僕の個人的な意見ではありますが、小説を書くというのは、基本的にはずいぶん「鈍臭い」作業です。そこにはスマートな要素はほとんど見当たりません。一人きりで部屋にこもって「ああでもない、こうでもない」とひたすら文章をいじっています。机の前で懸命に頭をひねり、丸一日かけて、ある一行の文章的精度を少しばかり上げたからといって、それに対して誰が拍手をしてくれるわけでもありません。自分一人で納得し、「うんうん」と黙って肯くだけです。小説を書くというのはまさにそういう作業なのです。やたら手間がかかって、どこまでも辛気くさい仕事なのです。

どうして書き続けられるのか。それは「ごく普通の人間」であっても小説が書けるのだという驚きを持続させるためである。
自らを「発展の途上にある作家」と評し「伸びしろはまだ無限に残されている」と言う。
持続は苦であっても、自己革新は怠りたくない。

プロであるとはどういうことかを本書は伝えてくれる。プロには精神のタフさが必要で、それを支える肉体の単連が必要である。このことは形を変え何度も出てくるから、村上氏の心の声なのだろう。

職業としての小説家

  • 著者:村上 春樹
  • 出版社:新潮文庫
  • 発売日:2016/9/28

モデルプロフィール

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  • 名前:稲葉柚香
  • 生年月日:1994/1/8
  • 出身地:静岡県
  • 職業:フラワーアレンジメント
  • 受賞歴:2016年TBS「恋んトス」シーズン4いなっち、講談社with読者モデル
  • 趣味・一言:テニスの王子様が大好きです
  • Twitter:@zuyu111
  • Insta:yuzu_kaori123

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。