“ジャーナル”で十分という記者魂『ミッドナイト・ジャーナル』 

ミッドナイト・ジャーナル

  • 著者:本城 雅人
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2016/2/24

本書を一言で

20年間、新聞記者として活動した著者が、持てる体験と知恵をすべて注ぎ込んで出来た感動の社会派エンタメ!!

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ツイッターやブログを通じて、誰でも手軽に情報を発信できるいま、火災などの発生時も取材者が現場に駆けつけるよりも早く、たまたま居合わせた人がインターネットなどで速報する。そんな時代における事件記者の役割とは何かが本書のテーマでもある。

本書は小説であるが、新聞社の記者が主人公だ。著者である元スポーツ紙記者、本城雅人氏が書く「記者」とは何なのか。記者を生業にする本物の文章から、感じるものがあった。

「ジャーナル」を追い求めよ! 一次情報こそ新聞の生命線

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主人公・関口豪太郎は中央新聞社さいたま支局の新聞記者であった。
主人公はよく、「ジャーナリズム」ではなく「ジャーナル」という言葉を使っている。

どうして「ジャーナル」と言うのか。取材精神のことを言うなら、ジャーナルではなくジャーナリズムだし、きちんと取材する人間を指しているのならジャーナリストでいい。ジャーナルだと〈日刊紙〉という意味になってしまう。

「それはやっぱり、俺たちは新聞記者だからだよ。ジャーナリストのように、時間をかけて、相手の懐に深く入り込んで、すべてを聞き出すことも大事だけど、俺たちには締め切りがあって、毎日の紙面も作らなければいけない。きょうはネタがありませんと言って白紙の新聞を出すわけにはいかないからな。〈時間をかけず〉かつ〈正確に〉と相反する二つの要素を求められる」

日々の紙面作りという意味では、新聞記者は他のジャーナリストと少し違う。
「もう一つ理由がある」と主人公・豪太郎が急に目線を遠くに向けた。

「うちの親父の口癖だったんだよ。テレビでジャーナリストって名のついた人間が、たいした取材もせずに偉そうなことを語ってると、いつも『こいつらジャーナルじゃねえな』と呟いていた。
自分のことをジャーナリストなんて呼ぶのは、なんかこっぱずかしいじゃねえか。俺にはジャーナルで十分だって言ってたよ。親父がそう言ってから、俺もジャーナルと言うことにしたんだ」

著者である本城氏が「ジャーナリストなんて気恥ずかしくて言えるか!〝ジャーナル〟で十分という記者魂を書きたかった」と述べていた。

新聞記者はどうして必要なのか

 今や新聞は、読まれないだけでなく、信頼されない。新聞記者として社会人の経歴をスタートさせた主人公でも、今の新聞は組織を守ることに追い込まれ、どちらを向いているかわからない報道をしがちだと感じている。

しかし、その傾向の中でふんばっている記者も多い。この小説は、20年間、新聞記者として活動した著者が、持てる体験と知恵をすべて注ぎ込んで、地道な事件記者たちを描いた、入魂の書である。

新聞記者である主人公・豪太郎は、女児連れ去り未遂が起き、犯人が2人かもしれないとの目撃情報を得た時、7年前に東京西部で起きたそっくりの事件を思い出す。
その時も犯人は2人という情報があったが、結局、逮捕された1人が死刑となって収束した。豪太郎ら警視庁取材班は真相に肉薄しながら、警察の言い分を聞いて、犯人2人説を捨てる。

もし、あの時の共犯者がまた事件を起こしているのだとしたら、犯人2人説を追及しなかったメディアにも責任があるんじゃないか。自責の念に駆られた豪太郎は、当時の記者たちと執念の取材を始める。
この作品の、記者たちと警察の凄まじい攻防は現実そのままだ。スクープ合戦の意味について、豪太郎は言う。

「早く書かなければ、メディアはなんでも公式発表を待つ。それこそ権力の思い通りだ。どうでもいいことだけ伝えられて、不都合なことは隠されてしまう」

これが、権力を取材できる新聞社と記者の存在意義だろう。だが、現状はその存在意義に背いて、まさに「権力の思い通り」であることに甘んじ、加担してはいないか。真相をつかむために、豪太郎は社の上層部とも戦う。強権が吹き荒れる今の時代こそ、新聞は必要なのだ。若い人にもぜひ読んでほしい。

ミッドナイト・ジャーナル

  • 著者:本城 雅人
  • 出版社:講談社
  • 発売日:2016/2/24

モデルプロフィール

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  • 名前:牧野友美
  • 生年月日:9/5
  • 出身地:千葉県
  • 職業:大学院生
  • 受賞歴:with スターメンバー
  • 趣味・一言:ピアノ演奏もしてます♡
  • 最近の悩み:読書が好きで読みたい本は即購入するのでベッド周りが本で山積みに。最近時間が無くそれぞれ1日3ページ程しか進んでいません。。。あと貧血。
  • Twitter:@tomochii__
  • Blog:牧野友美 ともログ

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

タバオ

大学受験に失敗し、1年浪人するも不合格。コンビニ、土方、ヒーローショウ、環境調査隊、家電量販店のアルバイトを経験するが、やがてはニートにまで落ちる。だが、失うものがないからこそ、開き直れる! 高卒だっていいじゃない。ニートだったからって何なのさ! よく読むのは、歴史小説と漫画。好きな歴史小説『播磨灘物語』、漫画『NHKにようこそ!』。