今こそ高校時代の悩みと向き合う『ハッピー☆アイスクリーム』

ハッピー☆アイスクリーム

  • 著者:加藤千恵
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2011/12/15

 

思春期は悩み多き時期

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みなさんは高校時代の悩みを覚えているだろうか?

電車や街中ではしゃいでいる高校生は、悩みなんて無縁の世界にいるように見えるが、内面はいつだって思春期特有のもどかしい悩みで溢れている。
例えば、「先輩のこと好きだけど、あの子も先輩のこと好きみたい」とか
「今年受験だけど、勉強したくない……」とか
「お母さんがうるさくてイラつく!」とか。

制服がすっかり似合わなくなった今も悩みの本質は高校時代と変わらない。
特に恋の悩みは、いくつになってもつきまとうもの。

現在進行形の恋の悩みに疲れたら、高校時代の恋の悩みを思い返してみるのはどうだろう?
もしかしたら、突破口に繋がるかもしれない。
高校時代をうまく思い出せない人には加藤千恵さんの『ハッピー☆アイスクリーム』がおすすめ。

高校生だって恋に悩む!
『ハッピー☆アイスクリーム』は短歌と5編の短編小説が収録されている。
物語の主人公は、みんな恋に、友情に、家族に、自分に、たくさんの悩みを抱えている高校生たちだ。
どの物語もさっきすれ違った高校生の日常を覗いているのでは? と思えるほどありふれたもの。ありふれているからこそ「あぁ、確かに自分もそうだった」と共感することができる。

短編小説の1つ「また雨が降る」は女子のあたしとハル、男子の吉村の仲良し3人グループが織りなす、切ない恋物語。
物語は3人が雨宿りがてら、ドーナツショップで時間をつぶしている場面から始まる。

吉村「ごめん、古典の訳本貸して。明日あてられそう」
あたし「じゃあドーナツ一つ買ってよ」
吉村「えー、いいけど。ハルは? なんか買う?」
ハル「やったー、便乗しよう」
吉村「そっちまでおごりとは言ってないじゃん」

小説にありがちな「現実で、こんなこと言うやつ見たことないよ!」という違和感がなく、まるでカフェで隣り合わせになった高校生の会話を聞いているみたいに自然体なので、気がつけば小説の世界に引き込まれている。

好きだからこそ臆病になる。

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あたしは吉村が好きで、吉村はハルが好きで、ハルは別のクラスの男子が好き。

読み進めていくと少しずつ3人の関係が見えてくる。
あたしの気持ちを知らない吉村は恋愛相談を持ち掛け、あたしは吉村への気持ちを隠すため、バイト先に好きな人がいると嘘をつく。
三角にもなりきれない不格好な関係の中、捨てきれない淡い期待も、やりきれない切なさも、ざらつく嫉妬も、鮮やかに描かれていている。
私もかつて「あたし」と同じ状況になったことがあるので、読んでいて胸が詰まった。
当時の私が言葉にすることができなかった悲しさと愛おしさの中間の気持ちを見事に代弁してくれている。

『ハッピー☆アイスクリーム』のおもしろさは、なんといっても小説の中に短歌が混じるところだ。

3人で傘もささずに歩いている いつかばらけることを知っている

短歌が文中に登場することで、いい意味で小説の流れが止まる。
そのとき、主人公に高校生だった頃の自分を重ねて、より深いところで感情を共有するのだ。

胸キュンの感情を共有

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そして本書を読み終えた後、タイトルが絶妙であることに気づく。
『ハッピー☆アイスクリーム』と聞いて懐かしさを感じる人も多いのではないだろうか?
ピンとこない人のために説明すると、ハッピーアイスクリームは会話をしているときに相手と言葉がかぶったら「ハッピーアイスクリーム!」と言ってタッチし、先にタッチした方はアイスをおごってもらえるというちょっとしたゲームだ。

いつもなら素通りしてしまう偶然に「ハッピーアイスクリーム!」という言葉を付け加えるだけでちょっと幸せになれる。
ふとした拍子に相手と言葉を共有する。
言葉だけでなく感情も共有する。
『ハッピー☆アイスクリーム』は多少の時代に差はあっても、高校生という主人公と同じ時期に「自分もこう感じていたな」と感情を共有する、時を超えたハッピーアイスクリームなのだ。

<お悩み解決3ヶ条>

  1. 「恋の駆け引きに疲れた!」
    →大人になるにつれて、「これって社交辞令?」「返信、時間置いてからしよう」なんて駆け引きを覚えて、必要以上に難しく考えてしまいますよね。
    でも、悩んでいるだけでは恋は前進しません。
    高校生みたいに素直になるのも一つの手ですよ!
  2. 「好きな人に好きな人(彼氏、彼女)がいる」
    →よくあるシチュエーションですが、当事者になると辛いですよね。
    諦めきれないなら、想い続けてもいいと思います。
    恋はコントロールできませんから!
  3. 「高校時代に恋しなかったのを後悔してる!!」
    →残念ながら、高校時代に全員が青春を謳歌しているわけではありませんよね。
    もう一度、高校生活を送ることはできませんが、せめて本書で気分だけでも味わいましょう。
    まるで自分の記憶のように既視感を覚える不思議な文章なのできっと満足していただけます。

<あわせて読みたい>


ハニー ビター ハニー (集英社文庫)
著者:加藤千恵
出版社:集英社
発売日:2009/10/20
スイーツはいつだって甘いけど、恋は違う。
甘くて苦い、だからこそクセになるのかもしれない。
ほろ苦い恋が詰まった短編集。

ハッピー☆アイスクリーム

  • 著者:加藤千恵
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2011/12/15

 

モデルプロフィール

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  • 名前:西田美穂
  • 生年月日:1994/12/23
  • 出身地:兵庫県
  • 職種:慶応義塾大学
  • 受賞歴:高円宮全日本スペイン語コンクール 西検中央委員会会長賞、メキシコ大使賞
  • 趣味:体を動かすこと、スポーツ観戦、読書

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WRITERこの記事を書いた人

石橋 愛加

5人兄弟の末っ子に生まれ、親兄弟にべたべたに甘やかされて育った生粋のゆとりGirl。「恋がしたい!」が口グセなくせにいつも女友だちとつるんでいるので、浮いた話はない。仕方なく少女マンガや恋愛小説で自家発電して、なんとか今日を生きている。好きなマンガは『シュガーズ』いつかあんな恋ができると信じている。