私だけのとっておきの「愛おしさ」 『きみはポラリス』

きみはポラリス

  • 著者:三浦 しをん
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2011/2/26

 

「愛おしい」が詰まった短編集

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記憶のページをめくっていくと、色濃く残っている瞬間というものがきっと誰にでもある。楽しかったことや、悲しかったこと、嬉しかったこと。それらの類いの感情と並んで甦るのが、「愛おしい」瞬間ではないだろうか。誰かを好きになった時のこと。ふと顔を起こした時に見えた横顔。もう2度と会えないだろうという、帰り際に交わした言葉。

あなたはどんな「愛おしい」を思い出すだろうか。
記憶の中だけではなく、日常にはふとした瞬間に愛おしさが落ちている。その延長線上に恋愛があっても、なくても。

そんな誰かを愛おしく思う瞬間を束ねた短編集です。その愛おしさが正しいのかは別として。今回は短編集の中から2つの物語を紹介します。

私たちがしたこと

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カフェで働く朋代は、カフェの常連客である古橋さんのことが気になっている。しかし、過去の恋愛をきっかけに恋をしてはいけないものだと思い込んで生きている。

その恋とは高校時代に付き合っていた俊介との恋である。二人はとても仲のいい幸せなカップルだった。毎日のように一緒に過ごしていた。俊介が風邪を引いたある日、朋代は俊介のうちから歩いて帰る途中でレイプにあう。そしてその相手を俊介が殺してしまったことで、二人の関係が変わっていく。このことを二人だけの秘密にしてずっと長い年月を過ごしてきた朋代。この話を初めて親友の美紀子に打ち明けたことで、俊介に会い自分の気持ちに決着を着けることになった。

この物語の最後は「素敵な不毛だ」というフレーズで終わっている。このフレーズが意味する本意をぜひ、読んで感じてみてほしい。

愛おしさというのは、時に人を変えてしまい善悪の判断をも越えてしまう。そんな痛々しいほどの純粋な愛おしさが漂う短編物語だと思う。
「いつも不思議に思うことがある。どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だとちゃんと把握できるのだろう。」
この一行が胸に刺さります。

ペーパークラフト

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里子と始には2歳の息子、太郎がいる。ある日3人で水族館に行った時に、始の後輩である勇二に出会う。この再開をきっかけに、勇二は里子と始のマンションに遊びに来るようになる。
上手くいかない育児と仕事の忙しい始との生活に嫌気がさしていた里子にとって、ペーパークラフトを作りながらフリーターをしている勇二の自由な雰囲気はとても魅力的に映ったのではないだろうか。
物語全体に漂う憂いが何とも言えない。少しずつ剥がれていく愛おしさ。当たり前の毎日を続けること、「妻」という仮面。物語の結末をあなたならどう捉えるだろうか。

自分にとっての「愛おしさ」

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この短編集の中には、様々な形の愛おしさが登場する。共通して言えることは主人公たちが「自分にとって愛おしいと感じるもの」をきちんと定義している点ではないだろうか。
周りからどう思われようとも、自分だけの「愛おしい」ものがある。それは決して消えることない夜空の道しるべ「ポラリス(北極星)」のような存在。暗闇を仄かに照らす揺るぎない輝き。
秋の夜長に、触れたことのない自分ではない誰かの「ポラリス」をちょっと覗いた気持ちになれる短編物語集です。

きみはポラリス

  • 著者:三浦 しをん
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2011/2/26

モデルプロフィール

saeko_profile
  • 名前:saeko
  • 生年月日:1979/6/10
  • 出身地:大阪府
  • 職業:元某企業の受付業務、フリーモデル(今はたまに)現在は子育てをしながら、週末をメインに飲食業をしています♩
  • 趣味・一言:ピアノ・エレクトーン・三線・カホン・歌/渋谷のJUNK CAFE TOKYOというカフェ&バー(ダーツあります)で働いているので是非遊びに来てください♩
  • 最近の悩み:お酒に強くない
  • Instagram:@saekoh

(カメラマン:伊藤広将)

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本to美女選書

WRITERこの記事を書いた人

そらい なおみ

言葉、コラージュ、写真等の作家活動を通じて大切な何かを伝えられたらと思っています。 2015年東京銀座にて個展開催、2016年ロンドンでの企画展参加。ライターとしても精力的に活動中。 幼い頃から「本」を通じて大切な感情を学んできました。その分「本」を通じて「本」に恩返しが出来るといいなぁと思っています。