ふとした瞬間が持つ、吸引力 『それもまたちいさな光』

それもまたちいさな光

  • 著者:角田 光代
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2012/5/10

 

それぞれの恋愛が放つ小さな光

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言葉に出来ない程の痛みを抱えても、笑みが溢れるような幸せを抱いても、同じように朝がやってきて、いつものパーソナリティーのいつものラジオが流れ始める。どこの誰だか分からない個人の気持ちを代弁するパーソナリティー。まるで音楽のようにバックミュージックになる時もあれば、やけに心にひっかかる一言が前触れもなく急に落ちてくる瞬間がある。物語に流れ続けるラジオ。そして3人の女性が抱えるそれぞれの恋愛。正しさよりも、キラリと輝く一瞬と、心の中に眠ったままのいつかの気持ちに光が注がれるような物語です。

始まりが曖昧な恋も悪くない

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この物語の主人公となる35歳独身の仁絵。デザイン会社に勤める彼女は大した野心もなく、今の生活に不満もない。そんな彼女の幼なじみである雄大。小さい頃から二人はお互いの事を知り、お互いの過去の恋愛を見てきた。今さらだが、雄大は仁絵に恋心を抱く。出会って何十年も経つ二人の間に存在しない、ときめきやドキドキ感。始まりがないぼんやりとした恋愛に不安を持つ仁絵の心情がページを捲るごとに優しくも鮮明に描かれている。

二人とも散々な恋愛をしながら、35歳というタイミングで恋人同士となるのかジャッジを下さなければならなくなる。タイミングとは妙なものだ。

最後に仁絵は「百人が反対してもやめられない恋よりも、どうでもいい毎日を繰り返していくこと、他人である誰かとちいさな争いを繰り返しながら続けていくことの方がよほど大きな強い何かなのではないか」と語る。

特別な毎日は長くは続かないから、どうでもいい毎日に馴染む恋愛を。過去に様々な恋愛をしてきたことがあればあるほど、身に染みる一言ではないだろうか。

ふとした瞬間が持つ、吸引力

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物語の中には主人公の他にも、様々な恋愛をしている女性が登場する。主人公である仁絵の仕事仲間である鹿ノ子は妻子持ちの男性に恋をしている。その恋が報われない恋だと解っていても。「普通に暮らしていて、おいしいものが好きで、友達と笑っていて、あるときふっと吸いこまれてしまう、それまでみたこともないような落とし穴に。自分の知らないタイプの恋に。」それはまさに、ふとした日常が持つ、吸引力。主人公の仁絵の恋愛模様とは相反する描写が物語を一層鮮明なものへと引き立ててくれる。

鹿ノ子の恋の行方は意外な結末を迎えるのだが、それはぜひ文字を追いながら味わって欲しい。
物語の終盤には「ラジオから流れるいろんな人たちのどうでもいいような、電波使って話すなよそんなことっていうようなことがさ、急にまぶしいように思えたんだよね。みんな大人にだまされた記憶とか持っててさ、なんだ嘘だったんだ!とか思う瞬間があってさ。なんていうか、そういうどうでもいいようなことで人生成り立っているよなっていうか。いや、そういうことがあるから人生っておもしろいんだよなっていうか」という1文がある。この1文がこの物語の核心となっているような気がする。

物語の最初から最後まで流れ続けるラジオ。そこから漂う日常の香りが、どんな恋愛の苦味も薄めてくれているような。明日の朝は、ラジオを聞きながらあの人のことでも思ってみようかな。小さな光を探しながら。

それもまたちいさな光

  • 著者:角田 光代
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2012/5/10

モデルプロフィール

nojiri_profile
  • 名前:野尻真里
  • 生年月日:1993/4/6
  • 出身地:岐阜県
  • 職業:歯学生
  • 受賞歴:withgirlsスターメンバー
  • 趣味:ショッピング、DVD鑑賞、カビトリ、カフェ巡り
  • 最近の悩み:肩が凝って疲れが溜まりやすく顔の血色がわるい
  • Twitter:@nojirimari
  • Instagram:@nojirimari
  • 他サイト:http://withonline.jp/m/withgirls/members/withgirls1498

(カメラマン:伊藤広将)

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