なぜ父親は子どもに嫌われてしまうのか?『家族関係を考える』

家族関係を考える

  • 著者:河合 隼雄
  • 出版社:講談社
  • 発売日:1980/9/18

 

1月末にこの記事は公開だが、執筆時点では2016年末から2017年始になる。

年末年始の長期休み期間でもあり、私が作業しにやってきたショッピングセンターは人でごった返している。

普段は家にいないお父さんたちも、つかの間の休息を楽しんでいるようだ

しかし!
子どもの立場からすれば、普段いない父親の存在は少々厄介でもある。

「どこに行くんだ?」と子どもに聞く父親。
他意はない。ただ話題のきっかけにしたいだけだ。
それなのに、「別に。どこでもいいでしょ」と子どもからは不機嫌そうに返事をされる。

普段コミュニケーションを取れない分、家族と、子どもたちと話したいのに……。
しょんぼりしているお父さんを想像すると、胸が痛む。

父性と母性

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こんなすれ違いを解決するために、役立つ本はないだろうか。
その答えは、心理学者である河合隼雄の『家族関係を考える』にある。

著者は西洋の学問である心理学を、日本特有の文化を考慮したうえで批評することが多い。
生前は小説家の村上春樹が複数回対談を行った、数少ない人物としても知られている。

さて、本書では父と娘、母と息子、嫁姑問題など、続柄に合わせた考察をしている。
その一方で、各章に共通して、頻繁に出てくる言葉がある。
「母性」と「父性」だ。

母性は何となくイメージがつくが、「父性とは?」と聞かれたら、意外と答えられないのではないだろうか。

著者によれば、母性は「包み込むこと」、父性は「切り離されること」であるという。

母親は子どもが生まれる前から、一心同体の存在。
どんなものでも、どんなときでも、相手を包み込むこと。これが母性であるという。

一方、父親は、一心同体の親子の下に現れた異分子。子どもにとって、初めての他者だ。
父親は社会規範の体現者であり、悪いことをしたときには罰を与える。

母性・父性は性別によらず、どんな人間の中にも存在する。
また、それは生みの親でなくても構わないという。

ここまでで言えること。
それは、父親には父親の役割があるということだ。

母親のように、包み込む優しさも子どもにとっては重要。しかし、規範となる存在は子どもの社会性を育てるために、また重要なのだ。

父性に従った行動で、家族関係を良好に。

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本書が出版されたのは、もう35年も前のことだ。
しかし、その本書でさえ、子どもたちの心の深層に父性的なもの、すなわち全体の調和を壊してでも自己の主張をする力が芽生えてきたのではないか、と述べている。

そんなとき、両親ともに母性的な振る舞いを子どもにすると、子どもは自己の主張をぶつけるべき社会的規範、他者の存在を見失ってしまう。
そこでいわゆる非行や、問題行動が起こっている、と著者は述べている。

あえて父親は、子どもにとって高い壁であり続けることが必要なのかもしれない。
むしろそれこそが、家庭円満のコツでもあるといえるだろう。

本書に置けるキーワードは母性と父性だが、各章の箴言は大変にユニーク。
「中年危機(今でいう熟年離婚)はなぜ起こるか」や「夫婦の絆は(結婚相手の)親子の絆と十字に結ぶもの」など、現代から見ても納得のいく言葉が数多い。

自分の立場に沿って読むのも面白いが、自分ではない家族の一員になりきって読んでみると、お互いに対する理解度も増すかもしれない。

「個性の尊重が家族関係に持ち込まれようとしている今こそ、個々人間の対話が重要である」と、河合も語っているのだ。

こんなお悩みを解決

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父親って、なんだか子どもに嫌われがち。寂しい思いをしています。
⇒父親は母子の心地よい一体関係を崩す存在なので、時に嫌われてしまうのも仕方ないかもしれない。しかし、家庭内においては必要な役割だ。そういう存在を「買って出ているのだ」と捉えることで、少し気持ちが楽になるかも。

家族関係を考える

  • 著者:河合 隼雄
  • 出版社:講談社
  • 発売日:1980/9/18

モデルプロフィール

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  • 名前:野村青未
  • 生年月日:1996/5/18
  • 出身地:東京都
  • 職業:慶應義塾大学
  • 受賞歴:ミス慶應SFCファイナリスト2016DHC賞
  • 趣味・一言:カフェ巡り、アイドル鑑賞
  • 最近の悩み:単位がくるか不安
  • Twitter:@mskeiosfc16no2
  • Instagram:ami_nmr

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

庭野蹴

同級生に同級生と見られない老け顔(両親譲り)眼鏡(父親譲り)の男性。お母さん方の井戸端会議によく顔を出しつつ、平和な青春時代を過ごす。 血のにじむような努力(とカロリー過多な食事)の末、早稲田大学に入学。授業に来なくなる友人を尻目にいそいそ学問に励む。結果、ちゃっかり論文で入賞したことも。また、(若さゆえ)関係各所に噛みつきながらフリーペーパーの制作もしていた。現在は社会人。