『ワークシフト』に学ぶ、未来の見据え方とつかみ方

本連載では、様々な視点から「未来を見据える」ことについて考えてきた。

これまでがある定点から未来を見据えることについて論じてきたのだとしたら、本書は俯瞰的な視点から大きく未来を捉える一冊になっている。

起こり得る様々な未来から、どの未来をつかみ取るのか。
本連載の最後に、見据えた未来を現実にするための一冊を取り上げる。

未来は複雑に絡み合ってできている

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著者はロンドン・ビジネススクールに所属し、経営組織論の分野において世界的に高名な学者だ。

あるとき、著者は自らの子どもから将来の夢について話された。
先述の通り、著者は高名な学者であり、以前にはコンサルタントとして勤務していた経験もある。
「将来の働き方」というトピックには多少なりとも自信があった。

しかし、その時に示せたのは「中途半端でありふれた予測」と「どうしようもなく古いうえに不完全なデータ」だった。

ちょうど同じころ、多くの企業経営者やビジネスパーソンから将来についての助言を求める声を聞いていた著者は、未来についてじっくりと検討することにした。

それはちょうど筆者の母が趣味で行っていた「パッチワークキルト」の作業と同様だったという。
未来には様々な可能性がある。当然、その予測も千差万別だ。
そこで様々な情報や主張(布)を集め、自然な流れになるように組み合わせていく作業(キルティング)を行った。
本書の特徴は未来を一つに絞らず、様々な未来を示していることにある。
それはポジティブなものもあれば、ネガティブなものもあるが、それを選び取ることを読者に求めている。
そしてもう一つの特徴は、できる限り多くの国での出来事やデータを基に本書を執筆している点にある。

多くの海外書籍はある地域での出来事に限定して具体例が挙げられていて、実感を持ちづらいものが多い(私が邦訳書をあまり読まない理由もここにある)。
が、本書では「群衆の知恵(学者ではない人との協働プロジェクトなど)」を借りるなどして、できる限り多くの可能性を考慮し、吟味している。

このことから、本書には「どの国・地域にいたとしても起こり得る未来」を描き出すことができている。
そして、だからこそ、本書から得られる実感もとても大きなものになっているのだ。

 未来を大きく変える5つの要因

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著者は未来を変える要因を大きく5つに分けている。

  1. テクノロジーの進化
  2. グローバル化の進展
  3. 人口構成の変化と長寿
  4. 社会の変化
  5. エネルギー・環境問題の深刻化

ここで述べられていること自体は、これまでにも多くの識者が述べていることだろう。
しかし、本書のユニークな点は、これらの要因を掛け合わせていくつかの仮想ストーリーを描いていることにある。

多くの要因がストーリーの中で滑らかにつながっているから、これから起こり得る未来について直感的に理解できるようになっているのだ。
だから、未来についての想像もより色を持ったものになり、広がる可能性に想いを馳せることができる。

本書内のストーリーを見ていくとそれぞれの要因の功罪に気づく。
たとえば仮想空間での働き方が可能になり、また容認されることは、長時間の通勤や労働によって家族との時間を楽しめない現在の働き方を良い意味で変えることになる。

一方で仕事上の仲間とは顔を合わせない付き合いが増えるようになる。
テレビ電話がより鮮明になり、手術の監督でさえ自宅に居ながらにしてできるようになるかもしれない。

そうすると、仕事での友人が増えず、孤独を感じるようになる負の側面も想像できる。
(実際、ある調査によれば今の職場を転職しない理由で最も多いのは「仕事場に友人がいるから」だそうだ)
繰り返しになるが、5つの要因を生かすも殺すも、自分であると筆者は言う。
そして、そのヒントも筆者は与えてくれている。

未来における変化からは、どんな人も逃げられない

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最後に、私が本書を読んで特に衝撃を受けたことを挙げておきたい。
それが、「グローバル化の進展」が私たちにとって与える影響の大きさだ。

著者は「未来を予測するのは基本的に不可能だが、どのような要因が未来に大きな影響を及ぼす可能性が高いかはわかっている。」としている。
上記の5つの要因の中であえてランクを付けるとするなら、グローバル化が最も重要な要因に私は思える。
たとえばあるストーリーでは、ロンドンにいながらにして、世界中のクライアントと連絡を取り続ける働き方が挙げられている。

これはテクノロジーが進化して、立体映像を使っての会議や高度化したクラウドによってどこでも仕事ができるようになったことにより実現する。

そうすると、もはや時間も場所も問わず、先進国だろうと発展途上国だろうと、どこでも仕事が可能になる。

今はメールがどこでも見られる、クラウドから作業中のファイルが取り出せるくらいがいわゆるノマド的仕事の限界だ。
しかし未来では、世界は常に動いており、それに合わせて24時間、世界中の仕事をあっせんしてくれる人材サービスが発展し、常にあなたと連絡を取りたい誰かがいるようになるだろう、と著者は指摘している。
私はインドのIT産業が発展した理由を思い出した。
それには、世界の中心であるアメリカとの時差が影響したと言われているからだ。

アメリカの人が寝ている間に、インドでは昼間に作業をすることができる。
このことで、インド企業は多くの仕事を受注できるようになったのだ。

「靴屋の主人が寝ている間に、こびとが靴を作ってくれる」という童話のようなことが、近い未来(もはや限りなく現在)では当たり前になるのではないだろうか。
こうした発展のカギをこのストーリーに見出せる一方で、それは人材市場が世界中に広がっていることを意味している。
日本国内で仕事を取り合うだけでも疲弊しているのに、今度は世界を相手にしなくてはいけないのだ。
世界の人材に、これから私たちは、そして日本は対抗していけるだろうか。
また、エネルギー資源を発掘できる国が限られている以上、エネルギー問題はグローバルに考えなくてはならない問題だし、水位の上昇が起これば移民も今まで以上に発生するかもしれない。

もはやグローバルに物事を考えずにはいられない時代が、もうすぐそこまで来ているのだ。
更にグローバル化は、ほか4つの要因とそれぞれ、相関関係が高いと言える。
つまり、そこが始まりつつある変化の起源と言えるのかもしれない。

それぞれの要因は容赦ないスピードで私たちに選択を迫っている。
もはや猶予は与えられていない。
私たちはどの未来を見据え、どの未来を選ぶのか。
鬱屈とした暗い世界なのか、わくわくするような明るい世界なのか。

本書の主題はまさに、本連載の「未来を見据える」ことそのものだろう。
未来を見据え、つかみ取るのは他でもないあなたなのだ。

今日のポイント

  • 限られた地域で起こり得る未来ではなく、世界で起こる未来(=誰にでも起こり得る未来)とは何かを本書から感じ取ることができる。
  • 未来は可変性を持っている。本書で挙げられる多くのストーリーから、自分に起こり得る未来を想像し、それに対処する術を考えることができる。
  • グローバル化はほぼ確実に起こり得る未来だ。そこを始点に考えることが、未来を見据える第一歩になるかもしれない。

ワーク・シフト ─孤独と貧困から自由になる働き方の未来図

  • 著者:リンダ グラットン
  • 出版日:2012/7/31
  • 出版社:プレジデント社

 モデルプロフィール

kurata_profile
  • 名前:倉田鮎美
  • 生年月日:1992/5/13
  • 出身地:神奈川県
  • 職業:ブライダル
  • 受賞歴:ミス大妻2012グランプリ
  • 趣味・一言:おいしいご飯を食べること♡
  • Twitter:@aym_krt

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Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

庭野蹴

同級生に同級生と見られない老け顔(両親譲り)眼鏡(父親譲り)の男性。お母さん方の井戸端会議によく顔を出しつつ、平和な青春時代を過ごす。 血のにじむような努力(とカロリー過多な食事)の末、早稲田大学に入学。授業に来なくなる友人を尻目にいそいそ学問に励む。結果、ちゃっかり論文で入賞したことも。また、(若さゆえ)関係各所に噛みつきながらフリーペーパーの制作もしていた。現在は社会人。