弱者が持つ強さとは?『フラジャイル 弱さからの出発』

フラジャイル 弱さからの出発

  • 著者:松岡 正剛
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日:2005/9/7

 

弱さには惹かれる部分がある。
古今東西、昔から語り継がれる神話の英雄には、必ず弱点というものが存在した。英雄アキレスであっても、アキレス腱だけは弱点であった。

また、恋愛においても叶うことのない恋、ロミオとジュリエットのように悲劇的な恋愛に多くの人が心惹かれる。
今、大ヒットをしている『君の名は。』も、出会うことのない男女が互いを追い求める、儚くも切ないストーリーだからこそ、老若男女に受け入れられたのではなかろうか? 儚いものにこそ惹かれるものがある。

なぜ、我々は儚く、崩れやすい弱いものに惹かれるのか?

本書では、神話、イチロー、ヤクザ、ウイルス、同性愛、ホロコーストなど多岐にわたって、弱きものが持つ多様性を探っていく。

弱さは強さの欠如ではない。
弱さというそれ自体の特徴を持った劇的でピアニッシモな現象なのだ。

弱点や欠点はもちろんそれ自体、致命傷になりうるが、転じて新しい強さが生まれる契機にもなり得る。自分の欠点やコンプレックスに悩む人には一度は読んでほしい。
弱点を認めた人こそ、真の強さが生まれる。

弱者にさせられた

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人間社会にはスケープゴートというものが存在する。
弱者をクラスの隅に追い込みいじめ、強者をより際出せる。
ユダヤ人大量虐殺がその最たるものだ。
最初から弱者はいなく、弱者は弱者にさせられる。

本書では、優生学をはじめとした弱者を囲い込んで、強さを際立たせた人間の暗い歴史を読み解きつつ、常に人間社会は弱者を必要としていたことを考察していく。弱さはしばしば階層の印として刻印されてしまうが、弱きものが持つ多様性や、自身の弱さをバネとして強さに転換するエネルギーにもなり得ることを説いていく。

思えば、今の社会はますます強さのみが目立ってきている。
ベンチャー企業の台頭で若き成功者が良しとされ、障害者への虐待、保育園建設への苦情などなど、弱いものいじめが常に行なわれている。
電車の中で見られる、障害者への冷たい目線。
学歴と見た目だけで判断される就職活動。

弱きものの声がますます黙殺されつつある社会だからこそ、弱さが持つ多様性を考える必要を著者は読み解いていく。

弱点のある登場人物

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古今東西、語り継がれる物語には、登場人物に欠点があることが多い。
ギリシャのオデュッセウスや日本のスサノオなど、その国を代表する英雄神話の主人公でも、それぞれ弱さや欠点がある。

オデュッセウスは猪の牙による傷を足に負っているし、スサノオは生爪を剥がれ、不具者としての日々を余儀なくされていた経緯がある。
ピクサーを代表するアニメ『トイストーリー』の登場人物もそれぞれ弱点を内包している。ウッディはアンディーのお気に入りのおもちゃであるポジションを失いたくないために、バズに嫉妬し、問題を起こしてしまうのだ。
また、その弱点を克服することで多くの人に感動を呼ぶ。

ピクサーは、ストーリーを作る際、主人公たちに弱点を作ることを重視しているという。すべてのピクサー作品は、主人公が自分の弱点を克服する物語なのだ。
ファイティング・ニモは息子を溺愛しすぎる父親が主人公であり、バグズ・ライフの主人公は発明に熱中するあまりアリの輪の中で問題ばかりを起こしていた。

人は弱点を持つ英雄の物語に心惹かれるのだ。
そして、欠陥や弱点があることは、場合によっては反転して、新たな強さを生む契機にもなりうる。一寸法師や桃太郎といった小さきものの物語にも注目すると、これらの物語の主人公は、体が小さすぎる幼少期をおくっていたが、大きくなってから鬼を退治し、成功を収めている。弱点は強さに反転する可能性を秘めているのだ。

人間は弱い存在を目指した

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猿から人へと進化する過程で、動物的には最も弱い存在を目指してしまったことは生物学的に見ても未だ解明されていない。鋭い爪や牙を劣化させ、速力と腕力も進化の過程で衰えていき頑丈な剛毛も減っていった。
なぜ、我々は軟弱な存在へと進化していったのか?

唯一の頼みの綱は、異常に発達した大脳の機能に期待することだった。
ここでも弱点が強さに反転する可能性を説明出来る。
動物的に速力や腕力が衰えていった代わりに、頭脳が成長していったのだ。

強さだけを求める社会

この本では、社会的に弱者と呼ばれるものに注目し、弱さが持つ特有の魅力や可能性を考察していく。
働きアリの法則でいうと、3割の怠けるアリにスポットを当てているのだ。

どんな集団や社会でも、人間が集まるとその分、全体の3割は怠けるようになる。その3割のアリが持つ、可能性や必然性を黙殺しているだけでは集団の成長は期待できない。人間は所詮、他者と比較して、自分の優秀さなどに満足する面もある。そのことが集団を前進させるエネルギーになるのだ。

現代は、強さだけを過剰に追い求める社会になりつつある。
金銭的にも弱きものは黙殺されるか、見て見ぬ振りをすることが良しとされている。弱きものの中にある微かな光をすくい取るものが、社会を変える原動力になるのかもしれない。

こんなお悩みを解決!

自分のコンプレックスや劣等感に悩む
→弱さには新しい強さに転じる可能性を秘めている。自分の弱点が、実は他者から注目されるきっかけにもなる。

フラジャイル 弱さからの出発

  • 著者:松岡 正剛
  • 出版社:筑摩書房
  • 発売日:2005/9/7

モデルプロフィール

hiromatsu_profile
  • 名前:廣松叶子
  • 生年月日:1991/9/16
  • 出身地:東京都
  • 職業:会社受付
  • 趣味:ホットヨガ、料理
  • 一言:大学ではフランス文学を学んでいました。スタンダールの『赤と黒』がオススメです!
  • 最近の悩み:今日の晩ごはん何にしようかな。。。
  • Twitter:@ramen_girls_knk
  • Instagram:@hiromatsu_kanako

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

kikuchan

6月9日(ロックな日)生まれ。 映像制作会社勤務。TSUTAYAから年賀状が届くほどの映画マニア。年間350本の映画鑑賞。 「映画ばかり見てないで、勉強しなさい」と言われて育つ。 学生時代は映画の新人賞受賞。文学だけでなく、あらゆる本を読むようにしてます。 好きな本:『竜馬がゆく』『スティーブ・ジョブズ』 趣味:座禅