グロテスクかつ新鮮な告白『傷口から人生』

傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

  • 著者:小野美由紀
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2015/2/10

就活時にパニック障害を引き起こしてしまった筆者は、ある整体師にこう言われたという。

イライラしたり悲しかったりする負の感情は、実はあり余ったエネルギーを消費しようとして生まれたもの。うつ病になったり、リストカットしたり、そういう人の体を触ってみると本当はエネルギーに満ちていて、すごくタフな体を持っていたりする。
ネガティブな感情に負けないだけの体を持っているのだから。
その巨大なエネルギーを発散する方法を見つけられずにいると「心の病」という形で出てしまうの。

私は、昔からネガティブな感情を殺さなければならないとずっと思っていた。
しかし、ネガティブな感情はエネルギーなのだ。
新たな力を芽吹くかもしれないエネルギー。

悩み、苦しみ、怒り、悲しみ。
それらの負の感情を抱え込む人にはぜひ、読んでほしい本だ。

就活でパニック障害になる

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とりあえずは、一番自分に合う、型が欲しい。
一流企業という型が……
自分のことを大きく見せて、心の底で密かに思っている
「自分は特別になりたい」という感情。
就活の時期になってはじめて、多くの人が「自分は特別な人間ではない」と気付かされるのではなかろうか。

筆者は、無敵のエントリーシートを持っていたという。
一年間の交換留学、世界一周一人旅、NPOでのボランティア経験。
根拠のない自信に満ち溢れていた。

しかし、結果は惨敗。パニック障害という最悪のかたちで就活を辞めてしまう。

就活時のパニック障害を赤裸々に語る筆者の姿に共感する人も多いと思う。
この本は、鋭いまでに繊細に、かつグロテスクに現代を生きる若者の悩みを描き切っている。

自分をどこか特別な人間だと思い込み、人を見下す人間は
人を見下すことで、自分を守っているということに気づかせてくれる。

母を殴る

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母を殴る。強烈なタイトルだった。
家族の関係が、どうにもならない時、どうにかしたい時、感情の糸がプツリと切れて、表に出てしまう。

子供の頃から、仲がうまく行かない母を殴ったこと。
そして、寝たきりの祖父に「死ね」と電話したこと。

逃げ場のない感情が、表に出てしまう瞬間。
家族とどういう関係を結びたいのか。
ちゃんと自分の願望を家族に伝えるということは、自分自身が向き合えるだけの人間性を獲得するということにもつながると筆者は語っている。
母を殴ってはじめて気づいたこと。言葉に痛々しくも強烈に私たちに家族とは何か語りかけてくる。

仕事がわからない人たちに

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「好きを仕事に」「旅を人生に」とかいう自己啓発本は売れる中、
「いいから黙って働け」という昔ながらの考えも漂う今日の就活事情。
こんな情報の洪水に流され、就職という第一のステップで躓いてしまう人もいる。

筆者は新卒無職となり、職を転々とする中、ものを書くという仕事にたどり着いた。

「ものを書く」という行為は、バケツの水があふれ出すようなもの。
生きている中で何かが起こるたびに、1滴1滴ずつ見えない滴がバケツの中に溜まっていく。その場では処理できない感情や、どうにもならないやり場のない気持ちが、人の心の中にあるバケツに溜まっていき、ある日満タンになったバケツは言葉の流れにとなって流れ出していく。

筆者は「書く」ということをこのように考えていた。
職を転々とし、社会との折り合いがつけず、悩むなか、
からだったバケツの水が一滴ずつ溜まっていき、こうしてものを書く仕事に就くようになった。

社会のレールにうまく乗ることができずに焦っていた自分。
自分の世界の中に酔っていたことに気づいた自分。
自分には価値がないと思いたくなくて、周りを馬鹿にし始めた自分。

バケツの水がたまり、ついに言葉となって溢れ出したとき、今まで無意味としか思えなかった仕事経験が、全て書くという仕事に活きていることに驚いたという。どんな職種にも、どんな無駄だと思っていた経験も、人生のどこかできちんと役立っていた。

最後に、筆者は社会の形を決めるのはいつも自分自身だと語っている。
「仕事はそういうものだから仕方ない」という人にとっては、仕事や社会はそういうものでしかないのだ。
その人が、ギザギザなら社会もギザギザに見える。
ただ、それだけなのだと。

自分の世界に酔っているより、他者と出会って、自分の世界を更新し続ける方が面白い。そのことに気づかせてくれる本だ。

こんなお悩みを解決!

自分と社会との折り合いがつけられない……
→社会の形を決めるのはいつも自分自身。自分の世界に酔っているのではなく、他者と出会って自分の世界を更新していくことが大切。

傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった

  • 著者:小野美由紀
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2015/2/10

モデルプロフィール

ayaka_kawahara_profile
  • 名前:川原あやか
  • 生年月日:1993/11/16
  • 出身地:福岡県
  • 職業:会社経営
  • 趣味:ディズニーに行くこと
  • Twitter:@ayacho1116
  • 他リンク: giselle-design.com

(カメラマン:伊藤広将)

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WRITERこの記事を書いた人

kikuchan

6月9日(ロックな日)生まれ。 映像制作会社勤務。TSUTAYAから年賀状が届くほどの映画マニア。年間350本の映画鑑賞。 「映画ばかり見てないで、勉強しなさい」と言われて育つ。 学生時代は映画の新人賞受賞。文学だけでなく、あらゆる本を読むようにしてます。 好きな本:『竜馬がゆく』『スティーブ・ジョブズ』 趣味:座禅