ローカル線を中心に物語が進む 『阪急電車』

阪急電車

  • 著者:有川 浩
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2010/8/5

 

テーマ毎に一週間本を紹介していく本to美女ですが、今週は、読んだ後に明日もまた頑張ろうと思えるような心がほっこりする本をご紹介します。

多種多様な人がいる「電車」で

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この文章を読んでくれている皆さんの中にも、中学や高校の通学や、会社の通勤時に毎日決まった時間・決まった車両に乗っていて、なんとなくこの人毎日いるなあ、なんて覚えてしまった事がある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身も通学中、この人はどんな仕事をしているんだろう、何人家族なんだろう、何が楽しくて何が悲しい人なのだろう…そんな風に乗客を見て、その人の人生を空想していたことがあったなあと思い出します。

『阪急電車』はタイトルの通り、阪急沿線の、今津線を舞台にした小説です。

さあ今日はどこの駅でどんな人が、どんな物語を繰り広げているのでしょう?『阪急電車』に乗って、旅をしてみましょう。

偶然の出会い

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ある日征志(まさし)が電車で居合わせたのは、休日に図書館で見かけていた「自分が借りたい本を、先にかっさらってしまう女性」。

いつもいつも読みたい本の先を越されるから要注意していたら、自分が知らない面白そうな本も持っていて。知らず知らずのうちに目で追うようになっていました。そんな彼女が、図書館から全く関係のない駅から乗ってきて隣の席に座り、征志はあたふた。でも彼女を知っているのは自分だけで彼女は俺を知らないのだからと、特に気にしている様子も見せず本を読んでいると、隣の彼女がぐいっと大きく窓に振り向きます。つられて征志も窓の外を眺めると、「生」という字が川の中州に石で作られていました。征志が思わず「あっ」と声をあげ、彼女が「すごいでしょ?」と声をかける事から、二人の旅は始まります。

進む電車と縮まる距離

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「全部直線で構成できる文字なんですよ、だから造りやすいの。それでいて、一字で目に入った時のインパクトがすごいでしょう?初めて見つけた時、生ビールが呑みたくなっちゃった」

「【なま】って読むんかな。俺、生死の【せい】かと思った」
電車から見えたオブジェをきっかけに弾む会話と、縮まる距離。
でも、そうこうしているうちに、電車は彼女のおうちの最寄り駅に到着してしまいます。
「この次会ったとき、一緒に呑みましょうよ。私、缶じゃなくてジョッキで行きたかったんです」

連絡先も交換してないし、次って、でも、どうやって、どうすれば…と思っていると再び彼女が口を開きます。 

「中央図書館。よく来てるでしょう。だから、次会ったとき」

征志の動揺もつかの間、彼女はホームに降り立ちます。
次いつ会えるんだろう、彼女はいつ自分を認識したんだろう、いつ、どこで…そんな考えが一瞬頭を巡ります。
でも、今日しかない! 

征志はホームに飛び降り、階段をぐんぐん上って、彼女の背中を追いかけます。

交差する旅

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征志と彼女の会話や、征志が走って行く背中を見ていた乗客がいました。

白い綺麗なドレスを着て、引き出物を持っている翔子は、周囲から白い目で見られています。それもそのはず、結婚式では白はタブーの色。

やだな、と彼女はつぶやきます。「いいもの見ちゃった。」恋が始まるタイミングなんて、今の自分にはきつすぎるのに、と。

その駅から乗ってきたおばあさんと女の子の二人連れが、空席を探し翔子の車両にやってきて、「花嫁さん」と声を出した瞬間、翔子の目から、涙が溢れ出します。

折り返し

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翔子の詳しい事情は本書を読んでほしいのですが、みなさんもある程度想像いただいているように、決して明るいだけではなく、つらく悲しい出来事も乗客の人生には巻き起こります。

それぞれの駅で、1つ1つのエピソードがあり、主人公たちは次の物語のキーパーソンになっていく。
そして、阪急電車今津線は折り返しへ。
電車の折り返しとともに、成長している主人公たちのストーリーが展開します。

恋の始まりに、恋の終わり。大事でないものを捨てる。出会う。変わる。変える。新しい何かが、始まる。

偶然から始まる出会いが人生を大きく変えたっていい。その時一緒の車両に乗っていただけでも、背中を押したっていい。押されたっていい。

今、全く関係ないと思っている彼女も、彼も、もしかしたら自分の人生の大切な登場人物かもしれない。

『阪急電車』の旅の後は、世界が少し自分に近づいた気分になって、毎日がいつもよりワクワクするかもしれません。

ぜひみなさんに読んでいただきたい、人生を、世界を、前向き捉えられるようになるような物語が詰まっています。
さあ、ようこそ、『阪急電車』の旅へ。

 

阪急電車

  • 著者:有川 浩
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日:2010/8/5

モデルプロフィール

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  • 名前:川原あやか
  • 生年月日:1993/11/16
  • 出身地:福岡県
  • 職業:会社経営
  • 趣味:ディズニーに行くこと
  • Twitter:@ayacho111
  • HP:http://giselle-design.com

(カメラマン:伊藤広将)

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Myコーデ

WRITERこの記事を書いた人

渕田 悠子

アッパー系な会社に勤めながらもインドア派を貫く社会人3年目。本の虫だった母の影響で、幼少期からの趣味は読書。読むのはもっぱら小説と漫画で、今のお気に入りは大好きな後輩におすすめされた、よしながふみ先生の『フラワー・オブ・ライフ』と、会社の先輩におすすめされた原泰久先生の『キングダム』。二作とも、私の心を震わせまくった作品です。 皆さんに、心が震える最高な本との出会いを提供できればと思ってます。