なんて厄介な!でもたまらなくクセになる『桜庭一樹短編集』

桜庭一樹短編集

  • 著者:桜庭一樹
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2013/6/13

 

ようこそ桜庭一樹の世界へ

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この本は直木賞作家桜庭一樹、初の短編集。
私は初のヨーロッパ旅行に胸を躍らせる道中、飛行機の中で読みました。

飛行機の中。
一通りのサービスが提供され、客室が消灯。窓の外に広がるのは青空と山地。
地球上のどこを飛んでいるのか、本当に目的地に連れて行っているのか。
完全に日常とは切り離された空間の中で私は、少年のような女流作家の悪戯に翻弄されていました。

みなさんに読んでいただく際、ぜひ気に留めていただきたいことがあります。
それは桜庭一樹特有の、小文字での表現。
「やだなぁ」とか「にやぁり」とか。あと「っ」の使い方も。
細かいところですが、私はこのクセのあるセリフの書き方にすっかりハマってしまいました。

今回はBGMとしてシドの『憐哀』というアルバムをご紹介いたします。
惨めで憐れな女の哀しい恋心を唄った曲が詰まっています。
1曲目の「紫陽花」はこの時期にこの本を読むのにピッタリ。

巻頭の「このたびはとんだことで」は、まさに惨めで憐れ。
哀しくもクレイジーな結末はとてもロック。

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これは、亡くなった男の遺骨の前で2人の女性が言い争うのを、遺骨の本人がただただ傍観するという設定で描かれた一編。
あなたは、当事者である死んだ男よりもさらに高いところから、その場面を俯瞰するのです。なんてバカな女たち、と鼻で笑うのです。

ほら、もうクセになりそうでしょう?

青年のための推理クラブ

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桜庭一樹の著書に『青年のための読書クラブ』という作品があります。
とある高校の読書クラブについて描いたチェーンストーリーで、この短編集にも、そのスピンオフといえる一編が収録されています。

舞台はもちろん読書クラブ。そこでそこでとある事件を推理するのが、今回の推理クラブの物語。

「青年」と聞いて私は、昔、どうでもいい雑学を紹介する某バラエティ番組でこんなことを言っていたのを思い出しました。
広辞苑には「美少年」という単語が掲載されているのに、「美少女」という単語は掲載されていなかったというのです。

現在世の中に出回っている広辞苑第六版には、「美少女」も「美少年」も掲載されています。でも、この番組が放送された当時、第五版には確かに、「美少年」しか見当たりませんでした。ジェンダー論が叫ばれる現在だからこそ、寧ろ余計に男女の区別を意識せざるを得ないのでしょうか。

青年も、青春期の男女を指す言葉だそうです。(これは広辞苑第六版に書いてありました!)
これがこの一編を読む上でのカギとなります。

多くの人が中学・高校で過ごす思春期は、子供たちがそれぞれに男性・女性として成長していく、人生の中でも特別な数年間です。

身体や心の変化に戸惑いつつも、自分が何者にもなれるような気になってしまうのも、この時期ならでは。

女でありながら女の子らしい恰好をするのを躊躇い、男装に憧れたこと、貴女にもありませんか?

この性別のトリックをうまく生かすためにも、「青年のための推理クラブ」は『青年のための読書クラブ』から独立して短編集に掲載されなければならなかったのでしょう。

これ以上いうのはタネ明かしになってしまうので、続きはご自分で、読書クラブに足を踏み入れてみてください。そして、マリア像失踪事件の謎に挑んでみましょう。

愛って何?付き合うって何?

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ここまで、巻頭から一編ずつご紹介してきましたが、続く一編も、これまた独特。
主人公は「ぼく」。でも、一番身近なようなようで現実味のない物語。

「ぼく」が初めてモコに出会ったとき、2人は大学生でした。
モコは変な服を着ていて、特に可愛いわけではありません。
でも「ぼく」は彼女にどこか性的な魅力を見出します。

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「見ているだけで幸せ、ってこと、ない?」

「ぼく」はモコと付き合いたいわけではありませんが、執着心は隠せません。
別に恋人同士になりたいわけではないけど、自分のことを見てほしい。知ってほしい。

そんな感情を抱いたままで「ぼく」は、留年を繰り返しながらモラトリアムを謳歌します。

「結婚したいわけではないけど、付き合ってみたい。」
「付き合いたいわけではないけど、抱かれてみたい。」

「ぼく」が「わたし」であったとしても、こんな感情を抱いてしまう人に出会ってしまったら、気持ちを抑えることなんてできないでしょう。

そんな時、自分が本当は彼を、彼女をどうしたいのかわからなくなってしまいます。
付き合うって何なんだろう?「愛してる」って伝えて何になるの?

モコに抱く「ぼく」の感情は最後まで曖昧なものでした。

「リア充爆発しろ!」という言葉に対してすら深く考察してしまいそうな後味を残す物語です。

さりげなく読者を物語の奥深くまで誘い込むことに長けた桜庭一樹。
あなたも、読んでいるうちに自分が何者か、どこからその景色を覗いているのか、わからなくなってしまうかもしれませんね。

こんなお悩みを解決!

*女(男)であるのが嫌だ
空想の世界では何者にでもなれます。作者の性別だって、ペンネームによってごまかされています。
*恋人がほしい
付き合うことにこだわっても意味がありません。付き合ったとして、何がしたいのかが大事です。
*インスピレーションが欲しい
視点を変えて世界を見てみましょう。時には、他人の心を覗くように、自分の別人格を呼び起こすように。

<あわせて読みたい>


青年のための読書クラブ

  • 著者:桜庭一樹
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2007/06

桜庭一樹短編集

  • 著者:桜庭一樹
  • 出版社:文藝春秋
  • 発売日:2013/6/13

モデルプロフィール

mana_profile
  • 名前:真奈
  • 生年月日:1994/1/16
  • 出身地:静岡県
  • 職業:タレント
  • 一言:愛してください♩
  • 最近の悩み:やせない
  • Twitter:@manatmnt

(カメラマン・Rimi Sakamoto/個人サイト・http://www.rimisakamoto.net/

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