日常の別れや孤独を切り取った、特別な一冊『号泣する準備はできていた』

作家の江國香織さんの、直木賞受賞作品で全12作品から成る短編集です。まず、何といっても印象的なのがタイトル。

『号泣する準備はできていた』

号泣するために準備をする人っているのでしょうか。タイトルだけ見ると意味不明です。しかし読み進めていくうちに、この本にはこのタイトル以外は考えられないと思えるほど、ぴったりの表現に感じられるようになってくるので不思議です。

号泣する準備はできていた

  • 著者:江國香織
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2006/6/28

それぞれの物語の主人公たちは、まさに今、自身の恋愛が終わろうとしている最中にいます。もしくは、日常の中でいつのまにか損なってしまったものを目の当たりにしています。そして、そういったものを前にしてみんな揃って、「号泣する準備」ができているのです。

ここに登場する女たちは、だれひとりとして上手くたちまわろうとしない。保険をかけておく小狡さもない。ころんですりむいた膝に手当てをしながら、また同じところにこぶを作ってしまうかもしれなくても、本能に忠実に生きようとする。本能を信じる力がある。そしてそういう生き方につきものの孤独を、真正面から引き受けている

このように解説を担当した光野桃氏が言うように、この短編集に出てくる女たち、ひいては江國さんの作品に出てくる女性たちは皆、潔い。だからこそ、別れや日常の孤独が描かれていても、決して悲しい物語にはなりません。

独特の言葉のセンスとともに、誰もが経験したことがある日常の別れや孤独を切り取った、特別な一冊です。

号泣する準備はできていた

  • 著者:江國香織
  • 出版社:新潮社
  • 発売日:2006/6/28

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